『食料自給率37%の正体。日本人が飢える日は来るのか』
二つの自給率と数字のトリック
農林水産省が発表する食料自給率には、「生産額ベース」と「カロリーベース」という二つの異なる指標が存在することをご存じだろうか。まず生産額ベースとは、その名の通り金額換算で算出された自給率である。現在の日本はこの数値が六七パーセントとなっている。しかし、これは単価の高い野菜や畜産物の生産額が全体を押し上げている側面が強く、仮に国内農産物の価格が上昇すれば、計算上の自給率も上がってしまう。経済活動の指標としては意味があるかもしれないが、国民が飢えずに生きていけるかという生存の観点においては、あまり参考にならない数字といえる。
私たちが直視すべきは、もう一つの「カロリーベース自給率」である。これは国民に供給される総カロリーのうち、どれだけを国産で賄えているかを示す、生命維持に直結する指標だ。現在の数値はわずか三七パーセント。先進国として異常な低水準にある。 ここで特に注意が必要なのは、畜産物の扱いである。国内で育てられた牛や豚であっても、その飼育に使われる飼料が外国産であれば、カロリーベースの計算上は「国産」としてカウントされない。飼料の輸入が止まればたちまち生産不能になる以上、この厳格な定義こそが実態を表しているといえる。
穀物自給率二八パーセントの衝撃
品目別に中身を紐解くと、さらに深刻な構造的欠陥が浮かび上がる。主食である米の自給率は九七パーセントと、一見すると安心できる水準を維持している。しかし、これは米の生産能力が高いからではない。日本人の食生活が変化し、米の消費量そのものが減少し続けているため、分母が小さくなり、見かけ上の自給率が高止まりしているに過ぎないのだ。 一方で、パンや麺類などへの需要シフトにより消費が増えている小麦の自給率は、わずか一五パーセントに留まる。これらを合わせた主食用穀物の自給率は六〇パーセントまで低下する。
さらに絶望的なのが、畜産物の餌となるトウモロコシなどの配合飼料を含めた「穀物自給率」である。この数字は驚くべきことに二八パーセントまで落ち込む。主要国の中でこれより低い数値を示すのはオランダくらいであり、日本は世界的に見ても極めて脆弱な食料基盤の上に立っている。有事の際、私たちは満足に穀物を口にすることさえできなくなる可能性があるということだ。
野菜と種の「見えない依存」
「いや、野菜なら国内で作っているから大丈夫だろう」と思うかもしれない。確かに野菜の自給率は八〇パーセントと比較的高い。だが、ここにも見落とされがちな「罠」がある。実は、日本で生産されている野菜の「種」の九割は、外国産なのである。 農林水産省は、海外の方が安価に大量生産できるため採種地が海外に移ったと説明しているが、これはコスト優先で安全保障を犠牲にした結果といえる。種を輸入に頼っている以上、海外での生産トラブルや国際物流の寸断により種の供給が止まれば、翌年から国内の野菜生産は壊滅的な打撃を受けることになる。自給率八〇パーセントという数字は、あくまで「種が輸入できる」という前提の上に成り立っている砂上の楼閣なのだ。
食料とは、単なる商品ではない。国家の独立と国民の生命を守るための安全保障そのものである。有事の際に飢えるのは、政治家ではなく私たち国民一人ひとりである。コスト効率よりも生存を優先し、真の意味での自給率向上へと舵を切るよう、政治に働きかけていくこと。それこそが、自分と家族の未来を守るための第一歩となるはずだ。
