はじめに
足底腱膜炎(Plantar Fasciitis, PF)は、最も一般的な足部障害のひとつであり、かかとの痛みの11〜15%を占めるといわれています。主な症状は、起床時や長時間の安静後の最初の一歩で強い痛みを感じることです。慢性化すると歩行や運動に支障をきたし、生活の質を大きく低下させます。
近年、PF治療には従来の**理学療法(ストレッチ、筋力強化、マッサージなど)**に加え、衝撃波療法(Radial Shock Wave Therapy, RSW)や超音波療法(Ultrasound, US)といった物理療法の有効性が注目されています。しかし、これらの治療法を併用した場合の効果については十分に検証されていませんでした。
今回紹介する前向き無作為化臨床試験は、RSWとUSを単独または組み合わせて実施し、足機能と足関節背屈可動域(ROM)への効果を比較したものです。
研究デザイン
- 対象者:慢性足底腱膜炎患者69名(25〜56歳、平均BMI 27.6)
- デザイン:前向き・無作為化・単盲検(評価者)・臨床試験
- 群分け(各23名)
- A群:超音波療法(US)+従来の理学療法
- B群:衝撃波療法(RSW)+従来の理学療法
- C群:RSW+US+従来の理学療法
治療内容
- 従来の理学療法(全群共通)
- 週3回 × 4週間(45分)
- ストレッチ(下腿・足底腱膜)、足・股関節筋の強化、横摩擦マッサージ
- US療法
- 週3回、1 MHz, 1.5 W/cm², 5分間連続モード
- RSW療法
- 週1回、2,000発、0.12 mJ/mm², 8 Hz
評価項目
- 主要評価:足機能指数(Foot Function Index, FFI)
- 副次評価:足関節背屈可動域(ROM, inclinometer使用)
結果
- 全群で治療前後に有意な改善(p<0.001)
- C群(RSW+US+理学療法)が最も高い改善効果
足機能指数(FFI)
- A群:128.3 → 64.5(改善率 49.7%)
- B群:129.1 → 61.9(改善率 52.0%)
- C群:128.0 → 45.2(改善率 64.8%)
足関節背屈ROM(°)
- A群:28.2 → 35.3(改善率 25.0%)
- B群:27.9 → 36.6(改善率 31.2%)
- C群:28.4 → 41.9(改善率 47.3%)
Tukeyの多重比較では、C群がA群およびB群より有意に優れていた(p<0.001)。
考察
- 超音波療法:血流改善、コラーゲン伸展性増加、痛み軽減などが作用機序。
- 衝撃波療法:抗炎症・鎮痛作用、血管新生、コラーゲン再生促進が報告されている。
- 併用効果:組織修復と疼痛緩和の両面で相乗効果が働き、足機能と可動域の改善につながった可能性。
これまでUSとRSWの単独比較研究は存在したが、本研究のように両者を組み合わせた無作為化臨床試験は初であり、臨床的に重要なエビデンスといえる。
限界
- 短期間(4週間)の評価のみで、長期効果や再発抑制効果は未検証。
- 患者の盲検化が困難だった。
- フォローアップが不足。
まとめ
- RSW+US+理学療法は、慢性足底腱膜炎の足機能と足関節ROMを有意に改善。
- 単独よりも併用治療が有効であることが明らかになった。
- 今後は長期効果や再発予防の検証が必要。