社員を雇うと税金が増える?消費税が招く「雇用の破壊」
消費税の計算に潜む「罠」
「正社員を雇うと、会社が払う消費税が高くなる」。 にわかには信じがたい話かもしれないが、これは会計上の紛れもない事実である。なぜそんな理不尽なことが起きるのか。その謎を解くには、消費税の計算式を少しだけ裏側から覗く必要がある。 通常、消費税の納税額は「売上で預かった税」から「仕入れや経費で払った税」を差し引いて計算する。これを専門用語で「仕入税額控除」と呼ぶ。 しかし、この計算式を数学的に整理し直すと、驚くべき正体が浮かび上がる。消費税とは、実は「企業の利益」と「非課税の経費」の合計に対して課税されている税金なのだ。
「人件費」という名の課税対象
ここで最大の問題となるのが、まさに「人件費」だ。 正社員に支払う給料は、消費税の課税対象とならない取引である。つまり、そこにはインボイス(適格請求書)が存在しない。計算式上、正社員の給料は「控除できない経費」となり、その分だけ会社が納める消費税額は増えてしまう。 一方で、派遣社員や業務委託への支払いはどうだろうか。これらは「外注費」として扱われ、消費税が含まれた取引となる。つまり、支払った分だけ納税額から差し引くことが許されるのだ。
経営者が選ばざるを得ない「道」
この仕組みを経営者の視点で見ると、残酷なほど合理的な答えが導き出される。 正社員を解雇し、派遣社員や外注スタッフに切り替える。ただそれだけで、会社の手元に残る利益は増え、支払う消費税は劇的に減るのだ。 「消費税の節税対策」として、雇用の非正規化が進む。この税制自体が、安定した雇用を破壊するインセンティブ(動機づけ)として機能してしまっているといえるだろう。
赤字でも逃げられない「第二法人税」
さらにたちが悪いのは、赤字企業への扱いだ。 法人税であれば、利益が出ていなければ支払う必要はない。しかし、消費税は違う。たとえ会社が大赤字で瀕死の状態であっても、従業員に給料を払っている限り、容赦なく徴収される。 利益だけでなく、人件費そのものに課税されるこの仕組みは、実質的な「第二法人税」であり、もはや「雇用に対する罰金」と言っても過言ではない。赤字の中小企業すらも見逃さず、雇用を守る努力をあざ笑うかのようなこのシステム。我々はその冷酷な構造に、もっと自覚的であるべきではないだろうか。
