消費税が日本企業の「生産性」を殺している理由
金銭以上の「損失」を生むシステム
消費税には、我々の財布からお金を奪うだけでなく、もう一つ重大な罪がある。 それは、日本中の企業の「時間」と「活力」を奪い、生産性を著しく低下させているという点だ。 1989年の導入以来、全ての事業者は「消費税の計算」という膨大な事務負担を背負わされた。100円の売上に対し、いちいち本体価格と税額を分けて記帳する。大企業ならシステムで自動化できても、町工場や個人商店では、今も夜な夜な電卓を叩き、伝票と格闘している現実がある。この時間は、何一つ新しい価値を生み出さない「無駄なコスト」そのものだ。
インボイスが招いた「事務作業地獄」
そこに追い打ちをかけたのが、悪名高いインボイス制度である。 これまでは「課税仕入れ」として一括処理できたものが、今後は請求書一枚ごとに「登録番号があるか、ないか」を確認し、細かく仕分けなければならなくなった。 漫画家やイラストレーターといった個人クリエイターたちは、本業の創作時間を削って、慣れない適格請求書の発行や複雑な申告作業に追われている。食べていくために必死で働いている彼らに、国は「もっと働け、ただしその時間は税金の計算に使え」と強要しているに等しい。これは国家的な損失といえるのではないだろうか。
「簡易課税」という名の欺瞞
さらに質が悪いのが、「簡易課税制度」だ。名前こそ「簡易」だが、その実態は決して簡単ではない。 これは売上5000万円以下の中小企業向けに、「面倒なら売上の一定割合を経費とみなして計算していいですよ」という制度だ。しかし、その「みなし仕入率」は、業種によって第1種から第6種まで細かく決められている。卸売業なら90%、不動産業なら40%といった具合だ。 問題は、現代の企業の多くが複数の事業を営んでいることだ。例えば、不動産屋が店舗の軒先で自動販売機を置いていたり、空きスペースでスポーツジムを運営していたりするケースは珍しくない。
複雑怪奇な計算が活力を奪う
こうなると、もう「簡易」ではない。「不動産事業の売上はこの計算、ジュースの売上はあの計算、ジムの会費はまた別の計算」といった具合に、全ての売上を事業区分ごとに厳密に分け、それぞれに異なる率を掛けて計算しなければならない。 こんな複雑怪奇なパズルを解いたところで、企業の売上が増えるわけでも、サービスが向上するわけでもない。ただ税務署を納得させるためだけに、膨大な労力が費やされている。 「日本の労働生産性は低い」とよく嘆かれるが、その原因の一端は、間違いなくこの非効率な税務行政にある。消費税というシステムそのものが、日本経済の足を引っ張る「重り」になっている事実に、我々はもっと自覚的であるべきだ。
