人間は正義を求める存在
マルクス・アウレリウスは『自省録』の中でこう述べています。
「正義にもとる人は神々を冒涜している。母なる自然は、互いに助け合うように理性的な生き物を生み出したからだ。私たちの使命はそれにふさわしい繁栄を遂げることであって、けっしていがみ合うことではない」
この言葉が示すのは、人間は生まれながらにして「正義をなす存在」であるということです。自然そのものが、人間に協力や助け合いの心を植えつけている。だからこそ、正義に背く行為は「自然に背く行為」であり、最も根源的な罪だとされるのです。
正義感は誰もが持っている
正義感は文化や宗教を超えて、私たちすべての人間に備わっています。たとえば、列に割り込まれると誰もが不快に感じます。他人に不当に搾取されることを嫌い、弱者を守るために法律を作り、税金を通じて富の再分配をある程度受け入れるのもその表れです。
つまり、正義感は後天的に学ぶだけでなく、生まれつき私たちの中に存在しているのです。
なぜ不正に流されるのか
しかし、人は時に不正に手を染めます。抜け道を見つければルールを破り、自分の利益を優先してしまう。ビル・ウォルシュの言葉を借りれば、「人を好き勝手にさせれば、たいていの人は悪い方向へ流れていく」のです。
これは正義感が欠如しているのではなく、「境界線」や「決意」が弱まっているからです。つまり、生まれつき備わっている正義感を支えるためには、意識的な努力が必要なのです。
正義を守るために必要なこと
正義を日常で活かすには、次のような心構えが役立ちます。
- 小さな不正を許さない
ごまかしやズルを軽視せず、誠実さを貫く。小さな行動の積み重ねが正義を支えます。 - 明確な境界線を持つ
どんな状況でも譲れない価値観を定め、それを基準に行動する。 - 他者との協力を大切にする
正義は独りで完結するものではなく、社会の中で実現されるもの。助け合いの精神を忘れない。 - 自分の利益よりも大義を優先する
ときには損をしてでも、公正さや誠実さを守る勇気が必要です。
歴史が教える「正義の呼びかけ」
アメリカ南北戦争の直後、リンカーンは分裂し興奮する国民に向けて「人間本来の気高い要素」を抱きしめようと呼びかけました。混乱の中であっても、人々が共有できるのは「正義を求める心」です。
これは現代にも通じる教訓です。社会が分断し、対立が深まるときこそ、私たちは「正義」という共通の土台に立ち返る必要があります。
まとめ
人間は正義をなすために生まれついています。しかし、放っておけば不正に流されてしまう危うさも持っています。だからこそ、明確な境界線と決意によって、自分の正義感を強化する必要があるのです。
今日からできることはシンプルです。
- 小さな不正をごまかさない
- 自分の中で譲れない価値観を確認する
- 協力と助け合いを優先する
この実践を積み重ねれば、あなた自身の正義感はより揺るぎないものとなり、周囲にも良い影響を与えていくでしょう。