政府の赤字=あなたの黒字?お金の絶対法則
節約がもたらす意外な真実
家計を引き締めるため、家族で節約を始めたとしよう。外食を減らし、小遣いを見直す。家計簿には黒字が積み上がり、家族にとっては喜ばしいことである。しかし、使われなかったお金はどこへ行くのだろうか。
答えは「銀行口座で眠り続ける」である。そして同時に、近所のレストランや商店の売上がその分だけ減ることを意味している。誰かが支出を減らせば、必ず誰かの所得が減る。社会全体で見ると、この当たり前の事実が非常に重要な意味を持ってくる。
お金の世界の絶対法則
ここで、経済のもっとも重要な原則について触れておきたい。それは「赤字」と「黒字」は必ずペアで存在するという、お金の絶対法則である。
あなたが店で千円の買い物をしたとき、あなたの財布からは千円が減り、店のレジには千円が増える。社会全体を一枚の家計簿として見れば、お金の総量は変わらず、ただ移動しただけである。経済学ではこれを「会計恒等式」と呼ぶ。「誰かの赤字は、必ず別の誰かの黒字になる」という、例外のない法則である。
政府の赤字は誰のものか
この法則は、私たちの家計や企業だけでなく「政府」にも当てはまる。政府もまた、税金を集めて公共事業や給付金として支出を行う、経済の登場人物のひとりである。
政府の収入より支出が多ければ、当然「赤字」となる。では、政府が赤字を出したとき、そのお金はどこへ行くのか。答えは「私たち民間」のところである。政府が十兆円の赤字を出して公共事業や給付金を行えば、それはそっくりそのまま、家計や企業の十兆円の黒字となって姿を現すのだ。
10万円給付金が証明したこと
これは決して机上の空論ではない。二〇二〇年の一律十万円の特別定額給付金を思い出してほしい。あの時、政府は約十二兆円の国債、すなわち「赤字」を新たに引き受けた。その結果何が起きたか。私たち国民の銀行口座に、合計十二兆円のお金が振り込まれたのである。
政府のマイナス十二兆円と、民間のプラス十二兆円。会計恒等式が見事に成立している。もし政府が赤字を嫌って給付金を出さなければ、私たちの口座のお金は増えなかった。「政府の赤字は悪である」というイメージは事実ではない。政府が赤字を出すからこそ、国民の手元にお金が増える。これが、お金の世界のシンプルな真実なのである。
