「自分が何者か考えてみよ。詰まるところ人間であり、人間にとって最大の力とは、理性に従って物事を選択できることだ。その力はほかのどんなものをも超越し、どんな支配も受けないのである」――エピクテトス『語録』。
この言葉は、人間にとっての本当の自由とは「選択の力」にあることを教えてくれます。環境や外部の状況は私たちに制限を加えることができますが、最後に「どう考え、どう意味づけるか」を選ぶのは常に私たち自身です。
フランクルが気づいた「奪えない自由」
精神科医で心理学者のヴィクトール・フランクルは、ユダヤ人として強制収容所に送られ、アウシュビッツを含む過酷な環境で三年間を過ごしました。家族と妻はすでに命を奪われ、自らの研究も人生の基盤もすべて破壊されていました。身体の自由もありませんでした。
しかし彼は考え抜いた末、たった一つだけ残されている自由があることに気づきます。それは「この苦しみをどう意味づけるか」を選ぶ力でした。ナチスでさえも、その自由だけは奪えなかったのです。
フランクルはさらに、自分の置かれた状況に意味を見出しました。心理学者として理論を検証し改良するチャンスだと考え、人々の役に立つことができると信じました。最愛の家族が自分と同じ苦しみを味わわずに済んだことも、慰めとしました。彼の著書『夜と霧』は、そうした気づきの結晶です。
「選択の力」とは何か
エピクテトスとフランクルに共通するのは、「状況を選べなくても、態度を選ぶ自由は残されている」という信念です。これは人間の隠れた力であり、人生における究極の自由です。
- 誰かに批判されたとき、落ち込むか成長のきっかけとするかを選べる。
- 仕事で失敗したとき、諦めるか学びに変えるかを選べる。
- 困難な状況に直面したとき、嘆くか挑戦とみなすかを選べる。
こうした小さな選択の積み重ねが、その人の生き方を形づくります。
現代で実践する「隠れた力」
私たちも日常で選択の自由を活かすことができます。
- 反応を選ぶ習慣をつける
怒りや不安にすぐ反応するのではなく、一呼吸おいて「どう行動するか」を自分で選ぶ。 - 物事に意味を見出す
困難を「ただの不幸」として終わらせず、「自分を成長させる機会」として捉える。 - 感謝を意識する
足りないものではなく、まだ残されているものに目を向ける。 - 価値観に基づいて決断する
他人の期待や環境に流されず、自分の信じる価値観から行動を選ぶ。
まとめ
- エピクテトスは「理性による選択の自由」こそ人間の最大の力と説いた。
- フランクルはアウシュビッツで、その自由だけは奪えないと気づいた。
- 私たちも日々の小さな選択で、自分の人生を形づくることができる。
環境を変えられなくても、態度を選ぶ自由は残されています。その自由をどう使うかが、人生の質を決めるのです。