膝関節屈曲制限の要因
膝関節の屈曲制限は以下の3つに大別されます。
- 伸展機構の癒着・短縮
大腿四頭筋や膝蓋腱、膝蓋支帯など伸展機構の短縮や癒着が原因。 - 後方組織のインピンジメント
半月板や後方関節包などが屈曲時に挟み込まれ可動域制限を引き起こす。 - 関節内圧・筋内圧の上昇
炎症や浮腫による疼痛反応が屈曲制限につながる。
これらを的確に評価し、要因に応じた治療へ結びつけることが重要です。
評価のポイントと治療アプローチ
皮膚・皮下組織
- 評価:創部を両端からつまみ、上下・内外方向に動かし移動性を確認。健側との左右差を比較。
- 治療:皮膚・皮下組織のスライドを促し、瘢痕癒着をリリース。
筋(防御性収縮)
- 評価:膝蓋骨遠位移動を他動的に確認し、同角度で伸筋の緊張差を評価。筋腹・筋間の圧痛や自動屈曲時の弛緩も観察。
- 治療:弛緩誘導や収縮—弛緩法を組み合わせ、筋緊張の正常化を図る。
内側側副靭帯(MCL)
- 評価:他動操作で触診し、内反・外反操作で圧痛の変化を確認。
- 治療:癒着部が緊張する角度前後で小さな振幅の屈伸運動を加え、靭帯と骨の癒着を剥離。
膝蓋支帯
- 評価:横走線維をターゲットに、膝蓋骨をチルティング操作で持ち上げ伸張性を確認。
- 治療:同操作を用い、内外側支帯の伸張性改善を図る。
膝蓋上嚢
- 評価:膝蓋上嚢を直接圧迫し、抵抗感や滑走性を確認。
- 治療:皮膚・筋を介して膝蓋上嚢を骨に圧迫固定し、時計回りや反時計回りに回転操作して組織を拡大。
膝蓋下脂肪体
- 評価:膝蓋下脂肪体を把持し、内外側への移動量を比較。左右差や制限があれば柔軟性低下を疑う。
- 治療:膝蓋骨を他動的に下制しつつ、側方から斜め方向に圧を加え大きく移動させる操作を行う。
まとめ
- 膝関節屈曲制限は「伸展機構の癒着」「後方インピンジメント」「内圧上昇」の3要因に分類できる。
- 皮膚、筋、靭帯、支帯、膝蓋上嚢、脂肪体など多層的に評価する必要がある。
- 評価に基づく徒手療法・運動療法の適用により、屈曲制限の改善が期待できる。
臨床では、要因を正確に鑑別し、組織ごとに最適なアプローチを行うことが重要です。