成長期の子どもにしばしば見られる「かかとの痛み」。その代表的な疾患の一つが**踵骨骨端症(セーバー病、シーバー病)**です。特に10歳前後でスポーツ活動を盛んに行う小児に多く発症し、臨床でも遭遇する機会が少なくありません。本記事では、踵骨骨端症の原因、症状、そして理学療法的な対応について解説していきます。
踵骨骨端症(セーバー病)とは?
踵骨骨端症は、発育期の踵骨骨端部(アキレス腱が付着する部分)に繰り返しの牽引ストレスが加わることで、血流障害や炎症を引き起こす疾患です。
特にサッカー、バスケットボール、陸上競技など、走跳動作が多い競技に参加する子どもに多く見られます。
主な症状
- かかとの圧痛(押すと痛い)
- 歩行時痛(特に運動後に悪化)
- 軽度の腫れ
- 強い痛みではつま先歩きになることもある
これらの症状は「過度な練習後」に出やすく、成長期特有の発症パターンといえるでしょう。
病態の背景
成長期の骨はまだ完成しておらず、踵骨の骨端核は特に負荷に弱い部位です。
- アキレス腱の牽引力
- ジャンプやダッシュでの衝撃
- 繰り返すストレスによる血流障害
これらが組み合わさることで炎症が生じ、痛みとして現れます。
保存療法と臨床での対応
踵骨骨端症は基本的に保存療法で経過をみることがほとんどです。理学療法士が関わる場面も多く、症状緩和と再発予防のための介入が重要となります。
1. 運動制限
- 軽症例では日常生活に大きな制限は不要
- 痛みが強い場合はスポーツ活動を一時休止
- 「痛みのない範囲」での活動を推奨
2. 足底挿板(インソール)の活用
- ヒールクッションを入れることで踵部への衝撃を軽減
- アライメントを整え、アキレス腱の牽引力を減らす効果も期待できる
3. ストレッチ・柔軟性の改善
- アキレス腱・下腿三頭筋のストレッチを指導
- ふくらはぎの柔軟性を高めることで踵への負担を減少
- 大腿後面(ハムストリングス)の柔軟性も併せて評価
4. 再発予防のための指導
- 練習前後のストレッチ習慣化
- オーバーユースを避けるための運動量調整
- シューズ選択の見直し(クッション性やサイズ感の確認)
理学療法士の視点
踵骨骨端症は「成長期特有の一過性の疾患」と捉えられる一方で、痛みが長期化すると運動習慣の低下や代償動作の形成につながる可能性があります。
- 疼痛コントロール
- 運動継続のための工夫
- 保護者や指導者への教育
これらを組み合わせ、子どもの成長を支える包括的なサポートが求められます。
まとめ
踵骨骨端症(セーバー病)は、スポーツをする10歳前後の子どもに多いかかとの痛みの代表的疾患です。
理学療法士としては、痛みの評価とともに、ストレッチ指導やインソール活用など実践的な介入が可能です。成長期特有の病態を理解し、子どもが安心してスポーツを続けられるようサポートしていきましょう。