幸運は誰にでも訪れる
セネカは『摂理について』の中でこう述べています。
「卑しい者、才に乏しい者にも成功は訪れるが、人生の惨事や混乱に打ち勝てるのは偉大な人物の特質である」
人生には、努力とは無関係に恵まれる人がいます。学校では常に一番、社会に出ても順調に出世し、無茶をしても不思議と傷つかない。まるで「神が愚か者に味方する」かのように、幸運に守られているような人たちです。
そうした人を見ると、「自分もあんなふうに楽に生きられたら」と羨ましくなるのは自然なことです。けれど、それは本当に立派な生き方なのでしょうか。
不運にこそ人の真価が表れる
幸運を享受するのに特別な技術は要りません。大切なのは、むしろ逆境の中でどう振る舞うかです。
- 病気や事故に遭ったとき
- 思いがけない裏切りに直面したとき
- 不況や災害で生活基盤を失ったとき
こうした「不運」に出会ったときこそ、人の真価が試されます。多くの人があきらめて足を止める中で、努力を重ねて目的を達成した人こそ、本当に立派な生き方をした人だといえるでしょう。
不運を生き抜く人の強さ
逆境を乗り越える人が持っているのは、天賦の才や偶然ではありません。
- 不屈の精神
- ひたむきな努力
- 感情をコントロールする力
これらこそが、彼らを生き延びさせる原動力です。さらに、もしその人が生まれつき不利な状況を抱えていても、それを受け入れた上で勝利を収めたなら――それはまさに「偉大な人物」と呼ぶにふさわしいでしょう。
不運に耐える力を育てるには
では、私たちはどうすれば「不運に耐えられる力」を育てられるのでしょうか。
1. コントロールできることに集中する
不運の多くは自分の力では避けられません。事故、災害、他人の行動――どれも自分では変えられません。しかし、自分の判断や行動は常に自分の手の中にあります。
2. 小さな困難を「練習」ととらえる
日常のストレスや不便を「不運の縮図」として受け止めましょう。満員電車、理不尽な上司、予定外のトラブル――これらにどう対応するかが、大きな逆境に備える訓練になります。
3. 感情を飼いならす
恐怖や怒りに支配されると、不運に押し流されます。ストア派の哲学者たちは、感情を「抑える」のではなく「距離を置く」ことを勧めました。冷静さを保つことで、不運の中にも選択肢が見えてきます。
偉大さは「逆境の中でどう生きるか」にある
幸運に恵まれることは、誰にでもあります。
しかし、不運に直面したときこそ人間の真価が問われます。
セネカの言葉が示すように、困難を乗り越え、感情を律し、自らの道を歩み続けることこそが、真の偉大さにつながるのです。
もし今、不運の中にいると感じているなら、それはあなたが偉大さを育むための試練かもしれません。