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関節拘縮はなぜ悪化する?固定解除後の関節包の炎症・線維化とリハビリの注意点

taka

骨折や靭帯損傷のあと、ギプスや装具で関節を固定する期間は珍しくありません。固定が外れて「さあ、ここから可動域を取り戻そう」と意気込んだものの、思ったように改善しない。むしろ、しばらくすると関節がさらに硬くなったように感じる。臨床実習や若手のうちに、こうした経験をする人は多いのではないでしょうか。

この記事では、2022年に発表されたレビュー論文をもとに、固定を解除して関節を動かし始めた時期(再動化期)に、関節の中で何が起きているのかを解説します。関節包が炎症から線維化へと進む流れを理解すると、固定解除直後の運動をどのくらいの強さで、いつから進めるべきかを考えやすくなります。

この記事のポイント

  • 固定による関節拘縮は「筋性」と「関節性」に分けられ、固定を解除すると筋性は自然に回復するが、関節性は回復しにくく悪化することもある
  • 動物実験では、固定解除の翌日に関節包で炎症が起こり、約1週間で線維化と関節性拘縮の進行がみられた
  • 固定解除直後の積極的すぎる運動は、炎症と線維化を強めて拘縮を悪化させる可能性がある
  • 再動化の初期は「炎症を管理しながら動かす」ことが、拘縮を残さないための鍵になる
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関節拘縮とは?筋性拘縮と関節性拘縮の違い

関節拘縮とは、関節の周りの組織が硬くなり、関節の動く範囲(可動域)が狭くなった状態です。関節を固定すると、その副作用として拘縮のほかに、筋萎縮、関節軟骨の変性、骨密度の低下なども起こります。拘縮は痛みや転倒、褥瘡のリスクにもつながるため、リハビリで予防と改善に取り組むべき重要な課題です。

固定による拘縮は、原因となる組織によって大きく2つに分けられます。1つは筋や腱、筋膜などが原因となる筋性拘縮、もう1つは関節包や靭帯など関節そのものの組織が原因となる関節性拘縮です。

動物実験の積み重ねから、固定期間が4週未満の短い拘縮では主に筋の要素が、4週以上の長い拘縮では関節包を中心とした関節の要素が、制限の中心になることがわかっています。つまり、同じ「曲がらない関節」でも、固定の期間によって主な原因となる組織が変わっていくのです。

炎症から線維化へ:組織が硬くなる仕組み

この記事で繰り返し出てくるのが、炎症と線維化という2つの言葉です。組織に何らかの刺激や損傷が加わると、まず炎症が起こり、炎症性サイトカイン(IL-1β、IL-6、TNF-αなど、炎症を広げる信号物質)が放出されます。

続いて、損傷を修復するために線維芽細胞が増え、コラーゲンをつくり始めます。このとき中心的な役割を果たすのが、TGF-β1という物質です。TGF-β1は線維芽細胞を筋線維芽細胞(組織を縮めて硬くする性質をもつ細胞)へと変化させ、コラーゲンの産生を強めます。本来は傷を治すための反応ですが、行き過ぎると組織にコラーゲンが過剰にたまり、硬く縮んだ状態になります。これが線維化です。

論文の紹介:固定解除後の関節で何が起こるのか

今回紹介するのは、広島国際大学の兼口明徳氏と小澤淳也氏が2022年に発表したレビュー論文です。著者らは、ラットの膝関節を曲げた位置で固定し、その後に固定を外して回復の過程を調べる研究を数多く行ってきました。このレビューでは、それらの研究をもとに、再動化期に関節の中で起こる変化と、治療による違いを整理しています。

項目内容
論文の種類ナラティブレビュー(既存の研究をまとめて考察した論文)
主な根拠ラットを中心とした動物実験(膝関節を屈曲位で固定するモデル)
テーマ固定解除後の関節包の炎症・線維化と、関節性拘縮の進行との関係
検討された介入抗炎症薬、低出力レーザー療法、トレッドミル運動、細胞増殖を抑える薬

このテーマが重要なのは、臨床でよく行われる他動的なストレッチだけでは、固定による拘縮を十分に改善できない場合があるためです。レビューの中でも、足関節骨折後のギプス固定に対する他動ストレッチが、底屈拘縮を改善しなかったというランダム化比較試験が紹介されています。拘縮への新しい対策を考えるには、まず関節の中で起きている変化を知る必要があります。

著者らが問題にしているのは、固定解除後の関節性拘縮の扱いです。筋性拘縮は固定を外すと自然に回復していく一方で、関節性拘縮は基本的に元に戻りにくく、3週以下の固定のあとでは、再動化の期間中にかえって悪化することが報告されています。なぜ動かし始めたのに悪化するのか。その理由を関節包の変化から説明しようとしたのが、このレビューです。

研究でわかったこと:炎症から線維化までの約1週間

固定解除の翌日に関節包で炎症が起こる

固定を始めて2週以内には関節に一時的な炎症がみられますが、それはやがて治まり、3週間固定したラットの関節包では炎症の徴候はみられませんでした。ところが、固定を外した翌日になると、関節の腫れ、関節内の沈着物、浮腫、炎症細胞の集まり、関節包での炎症性サイトカインの増加が、再び確認されました。

炎症の引き金として、著者らは2つの可能性を挙げています。1つは、固定によって縮んで弱くなった関節包に、動き始めた際の張力が加わって起こる小さな損傷です。実際に、再動化の翌日には関節包の後方で小さな出血の跡が観察されています。もう1つは、炎症に関わる一酸化窒素の産生が高まることです。

3日目に細胞が増え、7日目に線維化が進む

炎症に続いて、再動化の3日目には関節包で増殖している細胞が最も多くなりました。7日目には線維芽細胞が増え、TGF-β1の遺伝子の発現が高まり、筋線維芽細胞とⅠ型・Ⅲ型コラーゲンも増加していました。その結果、関節包は密に詰まって硬くなり、滑膜が短縮していました。そして、この線維化と並行して関節性拘縮が進行していたのです。

つまり、固定を解除してから約1週間という短い期間に、「炎症 → 細胞の増殖 → 線維化 → 関節性拘縮の進行」という一連の変化が起こっていたことになります。

積極的な運動は拘縮を悪化させ、抗炎症の治療で防げた

臨床的に最も重要なのが運動についての結果です。3週間の固定のあと、再動化の直後から毎日60分のトレッドミル運動を行わせたラットを調べた実験があります。その結果、翌日には関節包の炎症性サイトカインが増え、7日目までに線維化が強まり、関節性拘縮が悪化していました。

さらに、細胞の増殖を抑える薬を関節内に注射した実験では、炎症そのものは抑えなくても、線維芽細胞の増殖と線維化が一部抑えられ、拘縮の進行を防ぐことができました。この結果は、炎症に続く線維芽細胞の増殖が、関節包の線維化の重要な段階であることを示しています。

一方で、抗炎症薬を用いた実験では、関節包の炎症と線維化が抑えられ、関節性拘縮の進行を完全に防ぐことができました。また、1日120秒の低出力レーザー療法を行った実験でも線維化と拘縮の進行が抑えられ、トレッドミル運動と組み合わせた場合には、運動による悪影響が打ち消されていました。

臨床でどう活かすか:固定解除直後のリハビリの考え方

評価での視点:固定解除後は炎症の徴候を毎回確認する

この研究から学べる一番のポイントは、固定を解除した直後の関節は「炎症が再び起こりやすい状態」にあるという視点です。固定解除後の数日から1週間ほどは、関節の腫れ、熱感、安静時痛、運動後の痛みの増加などを、リハビリのたびに確認することが大切です。前回と比べて腫れや熱感が強くなっていれば、その日の運動量が多すぎたサインかもしれません。

また、可動域の制限が筋によるものか、関節包によるものかを見分ける視点も役立ちます。筋性の制限は時間とともに改善しやすい一方で、関節性の制限は放置すると残りやすいため、どちらの要素が大きいかを意識して経過を追います。

治療での視点:強さと時期を調整して動かす

「拘縮には早く積極的に動かすのがよい」と考えがちです。しかしこの研究は、再動化の初期に全可動域まで一気に動かすような強い運動が、かえって関節包の損傷と炎症を招く可能性を示しています。固定解除直後は、痛みや腫れが強くならない範囲で、ゆっくりとした運動から始め、炎症の反応を見ながら段階的に負荷を上げていく考え方が大切です。

ただし、著者らも、筋量や筋力、日常生活の回復のために、再動化期の運動は欠かせないと述べています。つまり「動かさない」のではなく、「炎症を管理しながら動かす」ことが重要です。研究で効果が確かめられたのは抗炎症薬と低出力レーザー療法ですが、臨床では医師と相談しながら、服薬の状況や患部の状態を踏まえて運動の量と強さを調整していきます。

予防の視点:固定中から線維化を意識する

著者らは、今回紹介した治療でも拘縮を正常な状態まで戻すことはできなかったと述べ、固定中からの予防的な介入も含めた対策の開発が必要だとしています。臨床では、医師の許可の範囲で固定されていない関節を動かしたり、固定部の筋の収縮を促したりして、不動の影響を少しでも減らす工夫が考えられます。固定期間中から、固定解除後の炎症と線維化を見越して関わることが大切です。

臨床メモ(筆者の経験から)

改めて修復期間のイメージならびに適切負荷というような目線を持って対応する重要性を認識します。

この研究の限界と読み方の注意

このレビューで紹介されている結果の多くは、若いラットを使った動物実験から得られたものです。著者ら自身も、同じ反応が人の患者でも起こるかどうかは、今後の研究で確かめる必要があると述べています。ラットの「1週間」がそのまま人の1週間に当てはまるわけではない点にも注意が必要です。

また、研究で用いられた固定期間は3週または5週で、それより短い固定や長い固定でも同じ反応が起こるかはわかっていません。さらに、高齢者では関節に終末糖化産物(AGEs)がたまりやすく、拘縮が悪化しやすい可能性も指摘されています。論文を読むときは、「どんな対象で、どんな条件の研究か」を確認し、結果を臨床に当てはめる範囲を考える習慣をつけましょう。

よくある質問

Q. 筋性拘縮と関節性拘縮はどう見分けますか?

筋性拘縮では、その筋が伸ばされる肢位で制限が強くなり、筋が緩む肢位では可動域が改善するのが特徴です。関節性拘縮では、筋の影響を除いた肢位でも制限が残り、最終域で硬い抵抗感を感じやすくなります。実際には両者が混在することが多いため、複数の肢位で比べて判断します。

Q. 固定を外したらすぐに可動域訓練をしてもよいですか?

可動域訓練そのものは大切ですが、固定解除直後は関節包が弱くなっており、炎症も起こりやすい時期です。痛みや腫れが強くならない範囲で愛護的に始め、炎症の反応を確認しながら少しずつ範囲と強さを広げていくのが安全です。

Q. 一度できた関節性拘縮はリハビリで改善しますか?

関節包の線維化による拘縮は、筋性拘縮に比べて改善しにくいとされています。だからこそ、線維化が進む前の固定中や固定解除直後から、炎症を悪化させない関わりで予防することが重要です。

まとめ

固定を解除した直後の関節では、翌日に関節包で炎症が起こり、約1週間のうちに線維化と関節性拘縮の進行が起こりうることが、動物実験から示されています。そして、この時期の積極的すぎる運動は、その流れを強めてしまう可能性があります。

臨床実習や日々の臨床で固定解除後の患者さんを担当するときは、「早く動かす」ことだけでなく、「炎症の反応を見ながら動かす」ことを意識してみてください。関節の中で起きている変化を想像できると、運動の強さや時期の判断に根拠をもてるようになります。

参考文献

  1. Kaneguchi A, Ozawa J. Inflammation and Fibrosis Induced by Joint Remobilization, and Relevance to Progression of Arthrogenic Joint Contracture: A Narrative Review. Physiol Res. 2022;71(4):447-455. https://doi.org/10.33549/physiolres.934876
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ABOUT ME
TAKA
TAKA
理学療法士|整形外科領域11年
理学療法士として整形外科領域で11年、臨床に携わっています。関節の可動域制限や痛み、術後のリハビリテーションを中心に、解剖学・運動学・生理学の知識を臨床で使える形に整理して発信しています。臨床実習生や若手セラピストが、根拠をもって評価と治療を考えられるようになることを目指しています。
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