過去や未来ではなく「現在」に集中する
マルクス・アウレリウスは『自省録』の中でこう述べています。
「過去を手放し、未来を神のはからいに委ね、ただ現在のみを正しい方向に向けよ――敬虔と正義に。」
ストア哲学の根本にあるのは、私たちがコントロールできるのは「今この瞬間の選択」だけだという考え方です。過去を悔やんでも、未来を案じても、結局のところ現在の行動こそが人生を形づくります。
敬虔と正義という「軸」
では、現在をどのように導けばよいのでしょうか。アウレリウスはその答えを「敬虔と正義」という徳に見出しました。
- 敬虔(piety)
自分に与えられた役割や状況を愛し、自然や運命を受け入れる姿勢。 - 正義(justice)
言葉を濁さず、真理を語り、他者や社会との関わりにおいて公正であること。
この二つの徳を軸に生きることで、私たちは自分を見失わず、誠実に振る舞えるようになります。
忍耐と抵抗を導くもの
同時代の記録によれば、哲学者エピクテトスはこう助言しました。
「人が二つの言葉を胸に刻めば、平穏な人生を送ることができる。その言葉とは忍耐と抵抗である。」
しかし、ただ耐えるだけでは盲目的になり、ただ抵抗するだけでは反抗的になってしまいます。大切なのは、何を耐え、何に抵抗するのかを見極める基準です。その基準こそ、マルクス・アウレリウスが説いた「敬虔と正義」なのです。
現代に活かす「徳を軸にした行動」
現代社会で「敬虔と正義」を実践する方法は、意外にもシンプルです。
- 職場での例
自分の役割を受け入れ、責任を果たす(敬虔)。同僚や顧客に対して公平に接する(正義)。 - 家庭での例
家族の違いや個性を受け入れ尊重する(敬虔)。子どもやパートナーとの関係で誠実に向き合う(正義)。 - 個人の習慣として
不運や困難を「与えられたもの」と受け止める(敬虔)。感情に流されず、冷静に真実を語る(正義)。
まとめ ― 徳を拠り所にする生き方
「過去でも未来でもなく、現在に集中せよ」
「現在を導く基準は、敬虔と正義である」
マルクス・アウレリウスのこの言葉は、忙しく不安定な現代社会を生きる私たちにとっても大きな指針となります。
- 過去に囚われず、未来に不安を抱きすぎず
- 今という瞬間に、敬虔と正義を実践する
その繰り返しが、結果として「平穏で徳ある人生」につながるのです。