足関節拘縮が生じやすい理由
足関節は下肢の中でも特に外傷や手術後に固定期間が長く設定される傾向があります。開放創や皮膚移植を伴う症例ではさらに免荷期間が延長され、結果として拘縮が重度化するケースも少なくありません。
関節拘縮は時間経過とともに進行しやすく、初診時から 「予防できる要因を見極め、早期に対処する」 視点が求められます。受傷機転や画像所見、手術内容を踏まえてリスクを予測し、予防的に介入することが重要です。
可動域制限の原因を見極める
適切な運動療法を実施するためには、可動域制限の原因がどこにあるかを正確に評価する必要があります。
- 骨・関節由来:骨癒合不全、関節面の変形、骨棘形成など
- 軟部組織由来:皮膚、関節包、靭帯、筋・腱、脂肪組織の器質的変化や癒着
特に足関節は膝関節をまたぐ筋群(腓腹筋、ヒラメ筋、長趾屈筋など)が影響しやすく、評価の際は 足関節だけでなく膝関節の状態も同時に考慮することが求められます。
運動療法の基本的アプローチ
足関節拘縮に対する運動療法では、次の視点が重要です。
1. 関節運動の適切な誘導
- 関節包や靭帯の張力方向を意識し、骨の転がり・滑りを伴った関節運動を誘導する。
- 不良な関節軌道を避け、正常な可動性を取り戻すことを目的とする。
2. 軟部組織への介入
- 癒着や硬結がある部位を触診で特定し、ストレッチやモビライゼーションを選択する。
- 「伸張障害」か「滑走障害」かを見極めたうえでアプローチする。
- 伸張障害:起始・停止を意識した収縮-伸張操作
- 滑走障害:組織間の摩擦を改善する徒手操作
3. 多関節的な視点
- 足関節は膝・股関節とも連動するため、単関節操作にとどまらず複合的なアプローチが必要。
- 例:足関節背屈の改善を目的とする場合、膝関節屈曲位と伸展位の両方で評価・介入を行う。
拘縮予防のための早期対応
拘縮は進行すると可逆性が低下するため、早期からの運動療法が欠かせません。ただし、骨折や手術直後は侵襲部位の安静も必要なため、整形外科医との情報共有が重要です。
- 初期:浮腫管理、創部保護、疼痛コントロールを優先。
- 中期:許可された範囲で関節可動域訓練を開始。
- 後期:荷重練習や歩行動作へと発展させる。
特に術後は創部への過度な伸張負荷が瘢痕化を助長することがあるため、進行スピードは慎重に調整する必要があります。
まとめ
足関節拘縮は外傷や手術後に高頻度でみられ、固定や免荷期間の延長がその主因となります。臨床では以下の点を意識することが重要です。
- 拘縮リスクを初診時から予測し、予防的に介入する
- 可動域制限が骨・関節由来か、軟部組織由来かを正確に評価する
- 骨運動を適切に誘導し、軟部組織の伸張障害・滑走障害に応じて介入する
- 足関節だけでなく膝関節を含めた多関節的アプローチを行う
- 医師と連携しながら、早期から段階的に運動療法を展開する
これらを実践することで、足関節拘縮の予防と改善につながり、最終的には患者の動作能力と生活の質を高めることができます。