リスフラン関節とは
リスフラン関節(Lisfranc joint)は、足根骨と中足骨の間にある関節群であり、足部の後足部・中足部と前足部をつなぐ構造を形成します。
具体的には以下のように構成されます:
- 内側楔状骨と第1中足骨
- 中間楔状骨と第2中足骨
- 外側楔状骨と第3中足骨
- 立方骨と第4・第5中足骨
このように足根骨と中足骨が複数連結することで、足部全体の柔軟性と安定性が確保されています。
リスフラン関節の特徴的な構造
第2足根中足関節(中央の柱)
リスフラン関節の中でも第2中足骨と中間楔状骨の関節は「ほぞ穴構造」を呈しており、最も可動性が小さい部位です。
この構造により、第2中足骨が「中央の柱」として機能し、前足部の安定性を確保します。
その一方で、第1列(第1中足骨)と第5列(第5中足骨)には大きな可動性が与えられ、柔軟な動きを可能にしています。
第1中足骨と内側楔状骨
第1中足骨と内側楔状骨の関節は、足部の回内・回外運動に強く関与します。
- 筋付着
- 内側:前脛骨筋腱
- 外側:長腓骨筋腱
- 背側・底側:後脛骨筋腱
これらの筋は内側アーチを支え、歩行やランニングの安定性に直結します。
第5中足骨と立方骨
第5中足骨と立方骨の関節は、外側アーチの可動性を担います。
- 特徴的な構造
- 第5中足骨底部には**粗面(結節)**があり、外側突起として触診可能
- 筋付着
- 外側端:短腓骨筋腱
- 背側:第3腓骨筋腱
この結節は臨床的ランドマークとして重要であり、捻挫や疲労骨折の際に評価されることが多い部位です。
リスフラン関節の機能的意義
リスフラン関節は、前足部の安定性と柔軟性を両立させる機能を持ちます。
- 中央の第2列が安定性を担う
- **内側・外側列(第1列と第5列)**が柔軟性を担う
この構造により、足部全体が衝撃吸収と推進力発揮の両方を実現しています。
また、中足骨の運動は**「列(Ray)」**という単位で捉えることが多く、欧米の文献でも頻繁に「1st ray」「5th ray」といった表現が使われています。
臨床における評価と病態
リスフラン関節損傷(Lisfranc injury)
リスフラン関節は外傷により損傷しやすい部位です。特にスポーツ外傷や転倒時に多く、
- 第1・第2中足骨間の離開
- 靭帯損傷
- 骨折合併
などが典型的です。
この損傷は見逃されやすく、治療が遅れると慢性疼痛や足部変形に繋がるため、早期診断が重要です。
機能障害の臨床的影響
- 可動性低下 → 足部の柔軟性喪失、歩行時の衝撃吸収不良
- 過剰可動性 → 内側アーチの低下(扁平足)、外反母趾の進行リスク
- 疼痛発生部位 → 第1列と第2列の間が最も多い
リハビリテーションの視点
- 関節モビライゼーション
- 制限されている列(Ray)を特定し、個別に可動性を改善
- 筋力強化
- 後脛骨筋・長腓骨筋を中心にトレーニング
- 足底アーチサポート
- インソールによる内側アーチ支持
- 荷重コントロール
- 初期は免荷 → 部分荷重 → 全荷重と段階的に進める
まとめ
リスフラン関節(足根中足関節)は、第2列の安定性と第1・第5列の柔軟性によって前足部の機能を成立させる重要な関節です。
- 第2中足骨は「柱」として安定性を確保
- 第1・第5中足骨は柔軟性を担い、不整地歩行や方向転換に寄与
- 損傷(Lisfranc injury)は見逃しやすく、早期診断と適切なリハビリが不可欠
臨床においては、リスフラン関節の可動性評価とアーチ支持の観点を持つことが、歩行障害やスポーツ復帰の成否に直結します。