「何よりも大切なのは、自分自身を正しく評価することである。得てしてわれわれは自分を実力以上に買いかぶるものだから。」
これはストア派の哲学者セネカが『心の平静について』で述べた言葉です。人間は往々にして、自分を客観的に見ることができず、実力以上に思い込んでしまう傾向があります。しかし同時に、逆に自分を実際よりも低く見積もってしまう危険もあります。
過大評価の落とし穴
多くの人が、自分の能力や影響力を必要以上に信じ込んでいます。
- できるはずもない計画に突っ込んで挫折する
- 力以上の自信を見せて周囲の信頼を失う
- 自分を過大に評価したために現実とのギャップに苦しむ
ゲーテも「自分自身を実際以上に買いかぶることは大きな過ちだ」と述べています。現実を直視せずに幻想に生きることは、自分を誤らせ、他人をも巻き込んでしまうのです。
過小評価の危険性
しかし、ゲーテは同時にこうも言っています。「自分自身を真の価値より下に見ることもまた有害である。」
私たちは「自分には無理だ」と決めつけ、挑戦の機会を逃してしまうことがよくあります。
- 大事な場面で勇気を出せなかった
- 自分の力を信じられずチャンスを失った
- 実際にはもっと強いのに、自分を弱いと思い込んでいた
思い出してみてください。大切な人を失ったとき、予想以上に冷静に振る舞い周囲を支えられたこと。あるいは、困難な状況を乗り越え、人生を変えるチャンスをつかんだこと。こうした経験は「自分の力を過小評価していた」と気づかせてくれるはずです。
自己評価を正しく行うために
では、どうすれば過大評価と過小評価の両極から抜け出し、正確な自己評価ができるのでしょうか。
- 客観的な証拠を見る
実績や行動を振り返り、現実に基づいて判断する。 - 他人の意見を取り入れる
信頼できる人にフィードバックを求める。 - 強みと弱みを両方書き出す
片方だけに偏らず、両面から自分を理解する。 - 「できない自分」も受け入れる
弱点を隠すのではなく、それを認めることで改善の余地が生まれる。 - 「思い込み」を点検する
「自分はこういう人間だ」という固定観念が、本当に正しいのかを疑う。
まとめ ― 正しく自分を知ることが力になる
セネカが言うように、自分を正しく評価することは何よりも大切です。過大評価は傲慢を生み、過小評価は可能性を閉ざす。どちらも人生を狭めてしまいます。
自分の強みと弱みを直視し、ありのままの自分を受け入れること。それが本当の意味で「自分を知る」ということです。
そして正確な自己評価は、恐れずに挑戦する勇気を与えてくれます。あなたが思うよりも、きっとあなたは強い。