思春期の「行きすぎ」はなぜ起こるのか|アドラー心理学が教える見守り方
思春期の子どもを見ていると、親や教師はしばしば「なぜそこまで極端なことをするのだろう」と感じることがあります。
反抗的な言葉、突発的な行動、無謀なチャレンジ。時には危険なことに手を出してしまうこともあります。
心理学者アルフレッド・アドラーは『子どもの教育』の中で、こうした現象を「思春期は行きすぎる傾向がある」と説明しました。
思春期に「行きすぎ」が起こる理由
思春期の子どもたちは、誰もが「自分はもはや子どもではない」と証明したいと感じています。
大人になりつつある自分を周囲に認めさせたい。その焦りが、極端な行動につながるのです。
例えば――
- 反抗的な態度をあえて見せる
- 危険なことに挑戦して勇気を示そうとする
- 家族や先生の言うことを真逆にする
これらはすべて「自分は子どもではない」という証明の仕方であり、裏を返せばまだ自分の立ち位置に不安を抱えている証拠です。
「証明しなければ」という感情の落とし穴
アドラー心理学では、「何かを証明しなければならない」と感じるとき、人はいつでも行きすぎてしまうと指摘します。
- 仕事で「有能だ」と証明しようとして無理を重ね、体を壊す大人
- 恋愛で「愛されている」と証明したくて相手を束縛する人
- 学校で「強い」と証明するためにいじめに走る子ども
これは大人でも子どもでも変わりません。証明欲求は強いプレッシャーとなり、冷静さを失わせ、極端な行動に駆り立ててしまうのです。
大人にできるサポート
では、思春期の子どもが「行きすぎ」ないようにするには、大人はどう関わればいいのでしょうか。
- 証明しなくても価値があると伝える
「あなたは存在するだけで大切な人だ」と繰り返し伝えることが、証明欲求を和らげます。 - 挑戦を肯定しつつ安全を守る
無謀な行動をすべて止めるのではなく、「どうすれば安全に挑戦できるか」を一緒に考えましょう。 - 行きすぎてもやり直せる環境をつくる
思春期には失敗がつきものです。失敗しても受け入れられる家庭や学校であれば、子どもは安心して成長できます。
思春期をチャンスに変える
思春期の「行きすぎ」は、子どもが必死に「自立しよう」としているサインです。
その不器用さを大人がどう受け止めるかによって、この時期は「危機」にも「成長の飛躍」にもなり得ます。
親や教師ができるのは、子どもを支配することではなく、見守りと勇気づけを通じてサポートすることです。
まとめ
思春期は、子どもが「自分は子どもではない」と証明しようとして、行きすぎる傾向を見せる時期です。
しかしそれは、未熟さではなく成長の一部。焦りや不安の裏返しなのです。
大人ができるのは、子どもが「証明しなくても大丈夫」と感じられる安心感を提供し、挑戦を安全に支えること。
そうすることで、思春期の行きすぎを「危険」ではなく「飛躍のステップ」へと変えることができます。
