なぜ気持ちが伝わらないの?「わかったつもり」の善意が招く悲劇を防ぐ方法
「あなたのことを思って、アドバイスしているのに!」 「俺も昔はそうだったから気持ちはわかるよ。だからこうすべきだ」
親切心から言ったはずなのに、相手が黙り込んでしまったり、逆に反発されたりした経験はありませんか? 「せっかく親切にしてやったのに」と、あなた自身も傷ついてしまったかもしれません。
実はこれ、コミュニケーションにおいて最も陥りやすい**「善意の落とし穴」**なのです。
この記事では、『7つの習慣』で指摘されている**「自叙伝的反応(自分の経験の押し付け)」**について解説します。
結論から申し上げます。 相手の話を聞くときに、自分の「メガネ」を相手にかけさせようとするのをやめてください。 「自分と相手は全く違う世界を見ている」と認めることから、本当の対話は始まります。
なぜ「あなたのため」が「迷惑」になるのか?
私たちは無意識のうちに、とんでもない思い込みをしています。 それは、**「自分が見ている世界は正しい。だから、私の経験(成功体験)は相手にも役立つはずだ」**という思い込みです。
「私のメガネを貸してあげる」という暴力
眼科医の例え話をしましょう。 目が悪くて困っている患者さんに、あなたが自分のメガネを外してこう言います。 「これをかけたまえ。私はこのメガネのおかげで、10年もよく見えているんだ。家に余ってるからあげるよ」
患者さんは言います。「いや、かけると余計にぼやけるんですが……」 するとあなたは怒り出します。「なんと失礼な! せっかく善意であげたのに、努力が足りないんじゃないか?」
滑稽な話に聞こえますが、私たちは会話の中でこれと同じことをしています。 「仕事がつらい」と言う部下に、「俺の若い頃はもっと大変だった(だから頑張れ)」と自分のメガネを押し付ける。これでは、相手の悩み(視力)は解決しません。
「自叙伝」を押し付ける私たち
元の文章にはこうあります。
すべての物事を自分のパラダイムのフィルターに通し、自分のそれまでの経験、いわば自叙伝(自分の経験に照らし合わせ)を相手の経験に重ね合わせて理解したつもりになっている。
相手の話を聞いているようで、実は**「自分の過去のデータ」**を検索しているだけ。 「ああ、それ知ってる」「私にも経験がある」 そう判断した瞬間、あなたは相手を見なくなり、自分の「自叙伝(過去の武勇伝や教訓)」を語り始めてしまうのです。
「善意の拒絶」が関係を壊す
この「自叙伝の押し付け」の何が怖いかというと、**本人に悪気がない(むしろ善意である)**という点です。
「わかってくれない」の悪循環
あなたは「良かれと思って」アドバイスします。 しかし、相手からすれば、自分の状況や感情を無視して、的外れな一般論を押し付けられただけ。当然、いい顔はしません。
すると、あなたはこう感じます。
そうした努力が受け入れられないと、せっかくの善意が拒絶されたと感じて、預け入れをやめてしまうのである。
「せっかく教えてやったのに」 「もういい、勝手にしろ」
こうして、お互いに被害者意識を持ち、心の扉を閉ざしてしまうのです。これは、親子、夫婦、職場、あらゆる人間関係で起きている悲劇です。
解決策:診断してから処方箋を出す
では、どうすれば良いのでしょうか? 答えはシンプルです。**「処方箋(アドバイス)を出す前に、診断(理解)をする」**ことです。
まずは「理解」に徹する
相手が悩みを打ち明けてきたら、解決策を言いたい口をぐっとつぐんでください。 自分の経験(自叙伝)はいったん脇に置き、**「相手の目には世界がどう見えているのか?」**を知ることに全神経を注ぎます。
- ×「わかるよ、俺もそうだった(自分語り開始)」
- ○「そうか、君は今、そんな風に辛いと感じているんだね(相手の感情を確認)」
自分のフィルターを外す勇気
相手の言葉を、自分の物差しで評価・判断しないこと。 ただ、鏡のように相手の感情を映し出すのです。
相手は「自分のことを本当にわかってくれた」と感じた時初めて、あなたの言葉に耳を傾ける準備ができます。 信頼という土台がない場所に、アドバイスという種をまいても、決して芽は出ません。
まとめ・アクションプラン
会話のゴールは、相手を論破することでも、教え諭すことでもありません。「理解すること」です。
- 私たちは無意識に、自分の経験(自叙伝)というフィルターを通して相手を見ている。
- 相手の状況を無視した「善意のアドバイス」は、ただの押し付け(メガネの強要)である。
- まず相手を深く理解しなければ、どんな正しい言葉も相手の心には届かない。
【Next Action】 次に誰かから相談や愚痴を聞くとき、**「アドバイス禁止」**というルールを自分に課してみてください。 「それは大変だったね」「そう感じたんだね」と、相手の感情に寄り添うことだけを意識してみましょう。
驚くほど相手が話し続け、最後に「話してスッキリした、ありがとう」と言われるはずです。 聞き方の技術(共感的傾聴)についてもっと深く学びたい方は、**『7つの習慣』や、コミュニケーションの名著『デール・カーネギー 人を動かす』**を読んでみることをおすすめします。人間関係のストレスが劇的に減りますよ。
