生理学

細菌感染症の4期分類|白血球数と左方移動でみる好中球の推移

細菌感染症は、血液検査における**白血球数や左方移動(桿状核球の割合)の変化によって、その経過をある程度推測することができます。適切な抗菌薬治療が行われ、順調に回復していく場合、感染症は4つの段階(第1〜第4期)**に分けて理解することが可能です。

ここでは、好中球動態をもとにした細菌感染症の「4期分類」について整理します。


第1期:感染初期(発症12〜24時間以内)

  • 骨髄はまだ好中球産生を亢進していない
  • 血流プール・滞留プールの好中球が優先的に消費される
  • 白血球数は基準値以下になることもある
  • 左方移動は認められない

この時期に受診する患者は少なく、実際に白血球減少を確認する機会は稀です。感染初期を反映する短い段階といえます。


第2期:好中球産生の亢進期(発症3〜5日目)

  • 桿状核球の割合が15%以上に上昇し、ピークへ
  • 骨髄が好中球産生を活発化し、供給量が消費量を上回る
  • 白血球数は基準範囲を超えて増加

この段階では、感染巣に十分な好中球が動員され、炎症反応が最も顕著に表れます。臨床的にも白血球高値+左方移動という典型的な検査所見がみられることが多いです。


第3期:治癒への移行期

  • 桿状核球の割合がピークから15%以下へ低下
  • 骨髄の産生亢進は徐々に低下
  • 供給量が消費量を上回り続けている
  • 感染巣での好中球消費量が減少し、感染が収束へ向かっているサイン

この段階は、患者が回復に向かっていることを検査値から確認できる時期です。


第4期:回復期

  • 桿状核球が15%以下に安定
  • 上昇していた白血球数が基準範囲内に戻る
  • 左方移動は消失し、好中球数も正常化

感染巣での細菌排除が完了し、好中球の追加動員が不要になった状態です。この時点で、細菌感染が治癒したと判断できます。


4期分類の臨床的意義

順調に回復する場合、細菌感染症は第1期から第4期までの順を追って経過します。
しかし、患者が改善しない場合や検査値が典型的な変化を示さない場合は、抗菌薬の効果が不十分である可能性が考えられます。このため、白血球数と左方移動の推移は、抗菌薬変更の根拠となる重要な指標になります。


まとめ

細菌感染症を白血球数と左方移動で4期に分類すると、以下のように整理できます。

  • 第1期:白血球減少、左方移動なし(感染初期)
  • 第2期:白血球増加、左方移動ピーク(炎症最盛期)
  • 第3期:左方移動低下、感染収束傾向(回復期前半)
  • 第4期:白血球数正常化、左方移動消失(治癒)

この流れを把握しておくことで、感染症の進行状況をより正確に理解し、臨床判断やリハビリテーションの安全管理に役立てることができます。

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理学療法士TAKAが自分の臨床成果を少しでも高めるために、リハビリ・運動学・生理学・物理療法について学んだ内容を発信。合わせて趣味の読書や自己啓発等の内容の学びも自己満で発信するためのブログです。