自己啓発

「取り巻きが増えたときが危険の始まり」──幸田露伴『努力論』に学ぶ、成功者を滅ぼす人間関係の罠

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「取り巻き」ができたとき、事業は危機に入る

幸田露伴は『努力論』の中で、事業の発展と衰退を分ける“人間関係の分岐点”について語っています。

「自分を取り巻く連中が出てきたときというのは非常に危ういときだと認識しておいたほうがいい。まさにこのときから、事業は衰退と縮小に向かっていくのだから。」

この一文は、現代の経営者やリーダーにも痛烈な警鐘を鳴らしています。
事業が成長し、ある程度の地位や名声を得たとき──。
その周囲には、自然と“取り巻き”が集まり始めます。

露伴は、この「取り巻き」が生まれた瞬間こそが、事業の最も危険な時期だと断言するのです。


なぜ、取り巻きの存在が危険なのか

露伴が指摘する“取り巻き”とは、単なる部下や仲間ではありません。
彼らは一見、リーダーを支えているようでいて、実はその成功に便乗して利益を得ようとする人たちです。

  • イエスマンばかりが集まる
  • 都合のいい情報しか入ってこなくなる
  • 批判を避けて、現場の声が届かなくなる

こうした状態が続くと、リーダーの判断力は鈍り、
やがて「裸の王様」状態に陥ってしまいます。

露伴の言葉を現代風に言えば、

「組織が大きくなったときほど、真実の声が届かなくなる。」

まさにそのときから、事業の衰退が静かに始まるのです。


成功の影に潜む「慢心」と「盲目」

露伴がこの章で本当に警告しているのは、**「取り巻きそのもの」よりも「取り巻きを許す心の油断」**です。

事業が軌道に乗ると、人は自信を持ちます。
しかしその自信が「慢心」に変わると、
他者の忠告が耳に入らなくなり、周囲の媚びやお世辞が心地よく感じられるようになります。

露伴は、まさにこの心理の変化を見抜いていました。

「取り巻き連中ができたとき」というのは、
外的な成功とともに、内面的な堕落の兆しが始まるタイミングでもあるのです。


「孤独に耐える力」が、真のリーダーを育てる

露伴の思想を読み解くと、
本物のリーダーや事業家は、孤独に耐えられる人であることがわかります。

誰かに持ち上げられたり、群れに囲まれたりして安心するようでは、
真の経営者とは言えない。

むしろ、

  • 自分の耳に痛い意見を歓迎する人
  • 常に現場に目を向ける人
  • 周囲の評価より、自分の信念を優先する人

こうした人こそが、取り巻きに流されずに事業を継続できる“上級事業家”なのです。

露伴は『努力論』全体を通じて、「精神の自立」こそ努力の最終形だと説いています。
それは、誰かの支えを拒むことではなく、
「人に惑わされず、自ら考える力を持つこと」。

取り巻きの誘惑に負けないためには、
この精神的な自立が欠かせません。


成功したときこそ、初心を見失うな

露伴がこの章で伝えたかったのは、**「成功の瞬間こそ初心を忘れるな」**という教えです。

取り巻きが生まれるのは、あなたが成功した証です。
しかしその瞬間、

  • 最初に抱いた志を思い出せるか
  • 原点の努力を続けられるか
  • 周囲の声に流されず、自分を律せるか

この3つが試されます。

露伴が生きた明治という時代も、急成長する経済の中で、
“成金”と呼ばれる一時的な成功者が多く現れては消えていきました。
彼らは皆、露伴の言う「取り巻き」に囲まれ、
いつの間にか初心を見失っていったのです。


「取り巻き」を遠ざける3つの習慣

露伴の思想を現代に生かすなら、
リーダーや経営者は次の3つを意識することが重要です。

  1. 耳の痛い意見を歓迎する
     批判を避けるのではなく、建設的な意見を求める姿勢を持つ。
  2. 現場に足を運ぶ
     デスクの上の情報だけではなく、実際の現場の空気を感じ取る。
  3. 賞賛よりも反省を重視する
     称賛の声に酔わず、「何を改善すべきか」を常に探し続ける。

これらの姿勢こそが、取り巻きの影響を排除し、
長く信頼されるリーダーを育てる“露伴流の防御策”です。


おわりに:孤高の努力こそ、真の栄光

幸田露伴の『努力論』は、努力を“孤独な闘い”として描いています。
その孤独に耐え、外からの誘惑やおだてに負けない人こそ、真の成功者です。

「自分を取り巻く連中が出てきたときが危うい。」

この警句は、時代を超えたリーダーの戒めとして心に刻むべき言葉です。

華やかさの裏で腐敗し、賞賛の中で堕落していく人が多い中、
露伴の教えは、静かに、しかし鋭く問いかけます。

成功の後も、自分を律し続けられるか?

その答えを持つ人こそ、
真に「努力を極めた人間=成熟したリーダー」と言えるのです。

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ABOUT ME
TAKA
TAKA
理学療法士/ビール
理学療法士として臨床に携わりながら、リハビリ・運動学・生理学を中心に学びを整理し発信しています。心理学や自己啓発、読書からの気づきも取り入れ、専門職だけでなく一般の方にも役立つ知識を届けることを目指しています。
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