「人を喜ばせること」が心を癒す理由|アドラー心理学に学ぶ、うつを軽くする生き方
「他人を喜ばせると、うつ病は二週間で治る」
オーストリアの精神医学者 アルフレッド・アドラー は、
うつ病の患者に対して驚くべき言葉を残しました。
「毎日、周囲の人を喜ばせる方法を考えるようにすれば、
うつ病は二週間で治る。」
これは単なる励ましの言葉ではありません。
**「他者を思うことが、心を救う」**という心理学的な真理を示しています。
アドラー心理学の中心には、
「人間は他者とのつながりの中で幸福を感じる存在である」という思想があります。
だからこそ、“他人に喜びを与えること”は、自分の心の健康を保つ行為なのです。
自分の世界に閉じこもると、心が沈む
落ち込んでいるとき、人は自然と自分の内側に閉じこもります。
「自分はダメだ」「誰もわかってくれない」——
そんな考えが心を支配し、孤独感が深まっていきます。
しかし、アドラーは警告します。
「自分のことばかり考えているのは、精神衛生上よくない。」
宗教でも「隣人を愛しなさい」という教えがありますが、
これは“他人を大切にすることで自分が癒される”という、
心理的にも深い意味を持ったメッセージなのです。
「善行」とは、特別なことではない
アドラーは言いました。
「常に善行を施すことが大切だ。」
では、善行とは何でしょうか?
それは決して大きな慈善活動のことではありません。
日常の中で、周囲の人に小さな喜びをもたらすことです。
たとえば——
- 朝、家族や同僚に笑顔で「おはよう」と声をかける
- 困っている人を手伝う
- SNSで誰かを励ます言葉を投稿する
- 感謝を言葉にして伝える
こうした小さな行為が、あなたの心を少しずつ温めていくのです。
「人のために動く」と、自分の悩みが小さくなる理由
周囲の人に喜びを与えようとすると、
自然と「自分の悩み」から意識が離れます。
自分のことばかり考えていた心が、他人のために使われる瞬間、
不思議と心の中に軽さと活力が戻ってきます。
心理学的にも、他人への親切な行動(=利他的行動)は、
幸福ホルモンである セロトニンやオキシトシン の分泌を促し、
ストレスを和らげ、気分を安定させる効果があるとされています。
つまり、**人のために動くことは「心の薬」**なのです。
「喜びを与える人」になるための3つの習慣
アドラーの言葉を実践するには、
まず“与える姿勢”を日常の中に取り戻すことが大切です。
今日からできる3つの小さなステップを紹介します。
① 1日1回、誰かを笑顔にする行動をする
挨拶でも、感謝でも、褒め言葉でもOK。
「相手を笑顔にできたか」を一日の目標にしてみましょう。
② 「自分に何ができるか」を考える癖をつける
誰かが困っているとき、「どうせ無理」ではなく
「自分にできることはあるか?」と一歩踏み出すだけで、人間関係も心も変わります。
③ 落ち込んだら「誰かを励ます」
自分がつらいときほど、他人を励ましてみましょう。
その言葉は、同時に自分自身への励ましにもなります。
幸せは「与えること」から始まる
アドラーは、人間の幸福を次のように定義しました。
「人は他者への貢献を感じるときに、最も幸せを感じる。」
つまり、幸福とは“得ること”ではなく“与えること”の中にあります。
そしてそれは、どんな人にも、どんな状況でも実践できるものです。
まとめ:人を喜ばせると、自分の心が明るくなる
デール・カーネギーの『道は開ける』もまた、
「他人に関心を持ち、感謝を伝えること」が心の健康を支えると説いています。
フランク・ループ博士(前章で登場した医師)が、
病床から励ましの手紙を送り続けたのも同じ理由。
“人に喜びを与えること”が、自分の生きる力になるのです。
今日、誰かのためにできる小さなことを一つしてみましょう。
その瞬間、あなたの心も少し明るく、温かくなっているはずです。
