『これからのキャリア開拓』を読む|40代からのキャリアは「自分の出番をつくる」時代へ
『これからのキャリア開拓』を読む:40代からのキャリアは「自分の出番をつくる」時代へ
「このままでいいのだろうか」
仕事に慣れ、組織の中で一定の立場を築いた40代・50代のビジネスパーソンが抱く不安は共通している。
かつてのように会社がキャリアを保障してくれる時代は終わり、自分のキャリアを自分で切り開く「キャリア自律」が求められるようになった。
田中研之輔氏ら3人のキャリア専門家による『これからのキャリア開拓』(日本能率協会マネジメントセンター)は、そんなミドルシニア層に向けた“行動の書”だ。
単なるキャリア論にとどまらず、人生100年時代をどう生き抜くかを具体的なワークと理論で導いてくれる。
「キャリア開発」から「キャリア開拓」へ
著者たちが強調するのは、「キャリア開発(development)」ではなく「キャリア開拓(exploration)」という考え方だ。
開発が「組織の中で自分を成長させること」だとすれば、開拓は「組織の外も含めて自分の可能性を広げること」である。
40代以降、多くの人が直面するのが“組織内キャリア依存”。
会社の中でしか自分の価値を発揮できず、転職や独立、スキル転換を難しく感じる状態だ。
本書は、その壁を破るための具体的なステップを提示する。
「ライフプレナー」という新しい生き方
本書のキーワードの一つがライフプレナー(Life-preneur)。
ライフ(人生)+アントレプレナー(起業家)を組み合わせた造語で、「人生の起業家」とも訳せる。
つまり、自分の出番を自分でつくり続ける人のことだ。
企業の枠にとらわれず、自分のスキルを社会に生かし、新しい価値を創り出していく。
その姿勢は、単なる「副業」や「転職」の話ではなく、もっと根本的に“どう生きるか”という人生設計に関わる。
ミドルシニア期からでも遅くない。むしろ、経験を積んだからこそできる「価値創造」がある、と著者たちは語る。
キャリア開拓を支える3つのデザイン
ライフプレナーとしてキャリアを再構築するために、本書では3つのデザインを提案している。
1. キャリアデザイン
これまでの経験・スキル・強みを棚卸しし、自分の「できること(Can)」「やりたいこと(Will)」「やるべきこと(Must)」を整理する。
特にミドルシニア期では、Canから始める自己分析が効果的だという。
過去に培った能力を再確認し、それを使ってどんな社会的価値を生み出したいのかを考えることで、次の一歩が見えてくる。
2. ビジネスデザイン
キャリアを再設計するうえで欠かせないのが「収益化の視点」だ。
著者は「メルカリマインド」を紹介する。
自分では取るに足らないと思っている経験やスキルも、他者にとっては貴重な価値となる。
副業、フリーランス、地域貢献など、自分の“眠れる資産”を社会に還元する方法を探る発想が重要だ。
3. コミュニケーションデザイン
長く組織で働いてきた人ほど、実は「自分自身と対話する力」が弱まっている。
本書では、人生で大切にしたい価値を10個挙げて順位づけする「価値観ワーク」を提案している。
年に一度でも、自分が何を大切にしているのかを見つめ直すことが、キャリア再構築の起点になる。
キャリア理論を「自分ごと」にするワークが満載
本書の特徴は、理論を現場で使える形に落とし込んでいる点にある。
「熱中ストーリーテリング」「ライフシフト自己紹介」「ヒーローインタビュー」などのワークは、読みながら手を動かすことで自分のキャリアを客観視できるよう設計されている。
たとえば「3年後、Must(やるべきこと)を達成した自分」としてインタビューに答えるワークは、思考を未来志向に切り替える効果がある。
「夢を描く」ではなく「叶った自分を語る」ことで、行動計画が自然と浮かび上がるのだ。
ミドルシニア期こそ、キャリアが“再成長”する時期
多くの人は、40代以降を「キャリアの終盤」と捉えがちだ。
しかし著者たちは、「ミドルシニア期こそ、最も価値を生み出せる時期」と言い切る。
経験・人脈・判断力といった無形資産をどう活かすかで、人生の後半戦は大きく変わる。
「出番を待つ」のではなく、「出番をつくる」。それがライフプレナーの生き方である。
読後の気づき:キャリアは会社ではなく、自分が育てるもの
『これからのキャリア開拓』を読むと、キャリアとは“所属の結果”ではなく“意志の積み重ね”だと気づかされる。
組織や年齢に縛られず、自分のWill・Can・Mustを見つめること。
そして、小さくてもいいから一歩踏み出すこと。
それこそが、人生100年時代を生き抜く最大のスキルなのだ。
まとめ
『これからのキャリア開拓』は、40代・50代でキャリアに悩むすべての人におすすめの実践書だ。
理論的な裏付けと豊富なワークを通じて、読者が自らの手でキャリアを再設計できるよう導いてくれる。
キャリアは「会社がつくるもの」ではなく、「自分がデザインするもの」。
この本を読み終えたとき、あなたの中で“新しい出番”の扉が静かに開いているはずだ。
