同じ体験でも子どもの受け止め方は違う──「解釈」が育ちを変える心理学
「体験」は同じでも、感じ方は一人ひとり違う
親や教師として、「同じように育てているのに、なぜ反応が違うんだろう」と感じたことはありませんか?
実は、子どもが受け取る「体験」は、客観的な出来事そのものではなく、“その子がどう解釈したか”によって形を変えるのです。
たとえば、兄弟が生まれたという出来事ひとつを取っても——
- 妹の世話をしたがる子もいれば、
- 親に甘えたくなる子もいる。
- 反対に「もう自分はお兄ちゃんだから」と急に自立する子もいます。
同じ出来事でも、まったく違う行動を見せるのはなぜでしょうか?
それは、体験をどう“意味づけるか”が子どもによって違うからです。
子どもは「事実」ではなく「意味」を生きている
心理学では、これを「主観的意味(subjective meaning)」と呼びます。
人は出来事そのものよりも、「その出来事をどう理解したか」に反応しているのです。
たとえば第二子の誕生を例に考えると、
- 「自分も役に立てる」と感じた子は、喜びと責任感を学ぶ。
- 「親を取られた」と感じた子は、不安や嫉妬を体験する。
親の立場からすれば同じ“出来事”でも、
子どもにとってはまったく異なる心理的体験となります。
つまり、教育や子育てで大切なのは、
「何が起こったか」ではなく、
「この子はその出来事をどう感じたのか」を理解することなのです。
「因果論」では説明できない人間の成長
この考え方は、機械的な“因果論”──つまり「原因Aがあるから結果Bになる」という直線的な考え方を超えています。
たとえば、
「弟が生まれた → 上の子は寂しがる」
という一般的な見方は、一見もっともらしく思えます。
しかし実際は、
「弟が生まれた → 頼られる存在になって誇らしい」
「弟が生まれた → 親に甘えたい気持ちが強くなる」
など、結果は一つではありません。
人の心は、物理的な反応のように“同じ刺激に同じ反応”をするものではない。
だからこそ、その子の解釈を尊重する視点が、教育や支援の基盤になるのです。
「体験のとらえ方」を支える3つの関わり方
子どもが前向きに体験を意味づけられるようにするために、
親や教育者ができる関わり方を3つ紹介します。
- 否定せずに“感じたこと”を受け止める
「そんなふうに思っちゃダメ」ではなく、
「そう感じたんだね」と一度受け止める。
→ 感情を認めてもらうことで、子どもは安心して次の行動を選べます。 - 事実より“意味”を聞く質問をする
「何が起こったの?」ではなく、
「そのときどう思ったの?」「どう感じた?」と聞いてみる。
→ 子どもの内面世界を理解する手がかりになります。 - 比較ではなく“その子自身の変化”に注目する
兄弟や他の子と比べず、「前よりできるようになったね」と伝える。
→ 自分なりの成長を実感しやすくなります。
まとめ:子どもの成長は「体験」より「解釈」で決まる
子どもは、与えられた体験そのものではなく、
その体験をどう受け止め、どう意味づけたかで成長していきます。
親や教育者にできるのは、
出来事を操作することではなく、
子どもが“自分なりの意味”を見つけていける環境をつくることです。
それが、真の意味で「子どもを理解する」ということなのです。
