子どもの「共同体感覚」はどう見分ける?|アドラー心理学に学ぶ健全な成長のサイン
「共同体感覚」が子どもの社会性を決める
アドラー心理学では、人間の幸福や成長の基盤として「共同体感覚(Community Feeling)」を最も重要な要素と位置づけています。
それは、「自分は社会の一員であり、他者と協力して生きている」という感覚のことです。
この感覚が発達している子どもは、他人を仲間として見ることができ、協力や思いやりの心を自然に表します。
一方、共同体感覚が未発達な子どもは、競争や比較にとらわれやすく、他者との関係を築くのが難しくなります。
アドラーは『子どもの教育』の中で、こうした違いを見分ける明確な基準を示しています。
「自分が他の子どもよりも優れていることを示そうとし、
他の子どものことを考えずに前へ前へと出ようとするなら、
その子どもは共同体感覚を持っていないと確信できる。」
優越感にとらわれた行動は「つながりの欠如」
子どもが「一番になりたい」「認められたい」と思うのは自然なことです。
しかし、それが「他者を押しのけてでも勝ちたい」という方向に偏ると、共同体感覚の欠如を示すサインになります。
この状態では、子どもは“他者との協力”よりも“他者との比較”に意識を向けています。
- 友達の成功を喜べない
- 褒められたい気持ちが強すぎる
- 負けると必要以上に落ち込む
こうした行動が続く場合、子どもは「つながり」よりも「優越」を重視する思考パターンに陥っている可能性があります。
アドラー心理学ではこれを優越コンプレックスと呼び、真の自信や幸福から子どもを遠ざけてしまうと考えます。
「他者への関心」があるかどうかがポイント
共同体感覚の発達度を見分ける最も簡単な方法は、子どもの「他者への関心の持ち方」を観察することです。
● 発達している子ども
- 友達の気持ちに共感できる
- 困っている人を助けようとする
- グループ活動で協力を楽しめる
● 未発達な子ども
- 他人に興味がない
- 自分が中心でいたがる
- 他者の失敗を喜んだり、勝ち負けにこだわる
アドラーが重視したのは、**「子どもが他人を仲間として見ているかどうか」**です。
この視点こそ、教育や子育てで最も大切にすべきポイントといえます。
共同体感覚を育てる3つの関わり方
では、共同体感覚が未発達な子どもに対して、大人はどう関わればいいのでしょうか?
アドラー心理学の実践的アプローチを3つ紹介します。
1. 比較ではなく“協力”をほめる
「あなたが勝ったね」ではなく、「みんなで頑張れたね」と声をかけましょう。
結果よりも“協力の過程”を評価することで、他者との関係性に価値を見出せるようになります。
2. 「貢献感」を実感させる
子どもが家庭や学校で「誰かの役に立てた」と感じられる体験を増やします。
たとえば、掃除の手伝いをして「ありがとう」と言われるだけでも、共同体感覚は育ちます。
3. 「他者への関心」を引き出す質問をする
「今日は誰と仲良くできた?」「誰かが困っていたらどうする?」など、
相手の気持ちを考える質問を日常的に投げかけましょう。
思考の方向を“自分”から“他者”へと少しずつシフトさせるのが目的です。
教育の目的は「競争」ではなく「協力」
アドラーは、教育の真の目的をこう述べています。
「教育の目的は、子どもが社会の一員として生きる力を育てることである。」
これは、単に学力を上げることでも、ルールを守らせることでもありません。
他者と協力し、支え合いながら生きる姿勢を身につけること。
それが、教育の根幹であり、共同体感覚の発達そのものなのです。
競争によって一時的な成果を得ることはできますが、
協力によって得られる“つながりの力”こそが、子どもを一生支え続ける本当の力になります。
まとめ:共同体感覚が育つ子は、しなやかに生きられる
- 共同体感覚が発達しているかは「他者への関心」で判断できる
- 「自分が優れている」と誇示する行動は、未発達のサイン
- 教育や家庭では、“比較”ではなく“協力”を重視する
- 「ありがとう」と言われる経験が、社会性の根を育てる
- 共同体感覚がある子どもは、人生の困難にも前向きに立ち向かえる
アドラー心理学が教えるのは、**「子どもは関係性の中で育つ」**という普遍的な真理です。
他者と競うのではなく、他者とつながりながら生きる力を育てること。
その力こそが、子どもを“強く優しく、そして快活に”成長させる最大の原動力になるのです。
