♟️ チェスから学べるもの②「用心深さ」──フランクリンが教える“全体を見渡す思考力”
■ 「用心深さ」とは、全体を見渡して判断する力
フランクリンがチェスから学ぶべき第二の教えとして挙げたのは、「用心深さ(circumspection)」です。
「チェス盤全体を見渡しながら、局面について考えるのである。」
一つの駒、一つの手だけに集中していては、勝利は見えてきません。
どんな一手も、他の駒や局面との関係の中で意味を持つからです。
これはそのまま、私たちの日常や仕事にも通じる教訓です。
視野が狭くなると、大切なことを見落とす。
一方、全体を見渡せる人は、リスクを避け、より良い判断ができます。
■ 「関係性」を意識する人が、強い
フランクリンは、チェスをプレイするときに意識すべきことを、こう整理しています。
「複数の駒と状況の関係について。
それぞれの駒がさらされている危険について。
それぞれの駒が互いに助けあう可能性について。」
つまり、「用心深さ」とは、関係性を読む力。
- 一つの駒(=個人)の動きが、他の駒(=仲間・チーム)にどんな影響を与えるか。
- どの駒がリスクにさらされているか。
- どの駒が守り合える配置になっているか。
このように、全体の構造を理解して判断する力が、チェスで勝つためにも、人生をうまく生きるためにも欠かせません。
■ 「敵の動きを読む」=他者の視点を持つ
フランクリンはさらに続けます。
「敵がどう駒を動かすか、それに対してどう攻撃するか、その可能性について。
敵の一撃を避けるため、その一撃を敵に不利な状況にもっていくには、どんな手段をとるべきか。」
ここでの“敵”は、単に相手プレイヤーのことではありません。
現代的に言えば、問題・リスク・障害となるものすべてを指します。
「もし相手がこう動いたら」「もし状況がこう変わったら」──。
そうした“他者視点”を持つことで、初めて現実的な戦略が立てられるのです。
用心深さとは、慎重さとは違い、冷静な想像力の働きです。
■ チェスの盤上が教える「リスクの全体像」
チェスをやっていると、一手を焦って打ったせいで、自分の守りが崩れることがあります。
フランクリンが言う「用心深さ」は、まさにその“視野の狭さ”への警告です。
- 自分の駒を守るつもりで打った手が、別の駒を危険にさらす。
- 相手の攻撃を避けたと思ったら、別のルートで追い詰められる。
こうした“見落とし”は、現実の世界でも同じ。
たとえば、
- 職場で1人に気を使いすぎて、他のメンバーの不満を招く。
- 一時的な利益を優先して、長期的な信頼を損なう。
用心深い人は、こうした連鎖を予測し、**「一手先」ではなく「全体の流れ」**を見て判断します。
■ 「用心深さ」は、視野の広さ × 思考の冷静さ
フランクリンがこの教えを通して伝えたかったのは、
慎重すぎず、しかし無防備でもない、知的なバランスです。
「こういったことを考えることで、用心深さが身につくのである。」
つまり、用心深さとは、生まれつきの性格ではなく、思考のトレーニングによって身につくもの。
チェスのように、
- 盤面を広く見て、
- 相手の立場を想像し、
- 自分の手のリスクを検討する。
この3つのプロセスを繰り返すことで、自然と“判断の深さ”が増していくのです。
■ 現代に活かす「フランクリン流・用心深さの実践法」
- 全体を見渡す習慣を持つ
会議や決断の前に、影響を受けるすべての人・要素を書き出してみる。 - 「もしも相手なら?」と考える
自分の判断を、相手や周囲の視点から見直してみる。 - 一手先ではなく“数手先”を読む
短期の結果より、長期の影響を優先する。
■ まとめ:「用心深い人ほど、信頼される」
ベンジャミン・フランクリンの言葉:
「チェス盤全体を見渡しながら、局面について考えるのである。」
この一言は、単なるチェスの戦略ではなく、人生を生き抜く姿勢そのものです。
- 目先にとらわれず、全体を見る。
- 感情ではなく、関係性で判断する。
- 勝ち負けよりも、バランスと安定を重んじる。
フランクリンの教えを現代風に言えば、
「広く見て、深く考える人が、最終的に信頼を得る。」
チェスの盤上にあるのは、人生そのもの。
焦らず、冷静に──そして用心深く、一手を進めていきましょう。
