リハビリ関連

痛みの原因による3分類:侵害受容性疼痛・神経障害性疼痛・非器質的疼痛を理解する

痛みを正しく理解するために

臨床において「痛み」は患者の主訴として最も多く、セラピストが評価・介入する際に避けて通れないテーマです。しかし一口に「痛み」といっても、その原因やメカニズムは多様であり、アプローチの方向性も異なります。

痛みは大きく 「器質的疼痛」「非器質的疼痛」 に分けられ、器質的疼痛はさらに 「侵害受容性疼痛」「神経障害性疼痛」 に分類されます。


① 侵害受容性疼痛

侵害受容性疼痛(nociceptive pain) は、外部からの刺激を末梢神経に存在する侵害受容器が感知し、その情報が脳へ伝達されることで生じる痛みです。

  • 原因となる刺激
    • 打撲や捻挫といった物理的刺激
    • 火傷などの熱刺激
    • 虚血や炎症による疼痛物質の発生に伴う化学的刺激

臨床で遭遇する痛みの大部分は、この侵害受容性疼痛に含まれます。急性期の外傷や炎症に関連する痛みとして理解するのが基本です。

👉 臨床での評価のポイント

  • 痛みの発症機序が明確か(外傷や炎症など)
  • 疼痛部位が限局しているか
  • 安静や適切な処置で痛みが軽減するか

これらの特徴を捉えることで、侵害受容性疼痛を推定できます。


② 神経障害性疼痛

神経障害性疼痛(neuropathic pain) は、末梢神経や中枢神経そのものが損傷・圧迫を受けることで発生する痛みです。

代表例としては以下が挙げられます。

  • 帯状疱疹後神経痛
  • 糖尿病性神経障害
  • 脊髄損傷や坐骨神経痛に伴う神経圧迫

神経障害性疼痛は侵害受容性疼痛と異なり、持続性が強く、「しびれ」「灼熱感」「電気が走るような痛み」 などの特徴的な訴えがみられます。

👉 臨床での評価のポイント

  • 神経の走行に沿った痛みがあるか
  • 感覚障害(しびれ・異常感覚)を伴うか
  • 安静時にも痛みが持続するか

これらを把握することが、リハビリ介入の方向性を決めるうえで不可欠です。


③ 非器質的疼痛

非器質的疼痛(non-organic pain) は、画像所見や器質的病変では説明がつかない痛みを指します。かつては「心理的疼痛」と呼ばれていましたが、現在は非器質的疼痛という表現が一般的です。

特徴としては、情動的・認知的要素が強く影響している点が挙げられます。過去の痛みの経験、不安や抑うつ、過剰な痛みへの注意や誤った認知が、痛みを強めているケースです。

👉 臨床での評価のポイント

  • 器質的な損傷が明確に認められない
  • 症状が不定で、部位や強さが変化しやすい
  • 心理社会的背景(ストレス、仕事、家庭環境)による影響が大きい

この場合、徒手療法や運動療法だけでなく、患者教育や心理的サポート が不可欠となります。


臨床での活かし方

痛みの分類を理解することは、単に学術的な整理にとどまりません。実際の臨床では次のように活用できます。

  • 疼痛評価の精度を高める
     痛みの性質を見極めることで、誤った治療を避けることができます。
  • アプローチの優先順位を決める
     急性期の侵害受容性疼痛では安静や消炎が中心ですが、非器質的疼痛では心理的介入が優先されることもあります。
  • 患者への説明に役立つ
     「あなたの痛みは神経の障害によるもの」「心理的要因も影響している」と伝えることで、患者自身が痛みを理解し、安心感を持てます。

まとめ

  • 痛みは 侵害受容性疼痛・神経障害性疼痛・非器質的疼痛 の3つに分類される
  • 臨床で多いのは侵害受容性疼痛だが、神経障害性や非器質的疼痛も少なくない
  • セラピストは「どのタイプの痛みか」を見極め、適切な治療戦略を立てる必要がある

痛みの分類を理解することは、評価の精度を高め、患者に寄り添ったリハビリを実践するための基盤となります。

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taka
理学療法士TAKAが自分の臨床成果を少しでも高めるために、リハビリ・運動学・生理学・物理療法について学んだ内容を発信。合わせて趣味の読書や自己啓発等の内容の学びも自己満で発信するためのブログです。