コンサル系ビジネス書が好きすぎる“構造化”の世界──MECE・ロジックツリー・ガバニングを100冊読んで分かったこと
コンサル出身者が書くビジネス書の“構造化”しすぎ問題
ビジネス書界隈には、「コンサルティングファーム出身」という肩書きがほぼ最強のブランドとして存在している。
著者略歴にはたいてい、
- マッキンゼー最年少シニアフェロー
- BCG元パートナー
- アクセンチュア戦略部門出身
といった肩書きが並ぶ。
「シニアフェローが何をするのか」はよく分からないが、とにかくすごそうだという圧がすごい。
そしてコンサル出身者の本には、ほぼ共通した“特徴”がある。
- 図が多い
- フレームワークと言いたがる
- すぐロジックツリーで分解する
- とにかく「情報を構造化しろ」と言う
今回は、この“構造化しがち問題”の代表例をまとめてみる。
ガバニング:最初に「ポイントは3つ」と宣言せよ
杉野幹人『超・箇条書き』では、
冒頭で「ポイントは3つ」と宣言する技術を ガバニング と呼ぶらしい。
「ポイントは3つです」と先に言うことで、全体像が見やすくなる。
これはたしかに便利。
実際、多くのビジネス書は「◯個の法則」「◯つの習慣」といったガバニングを目次や帯で使っている。
コンサル界では「何を何個話すのか」を冒頭で示さないと落ち着かないようだ。
階層が混ざると許せない──『ゼロ秒思考』の世界
マッキンゼーOBによる『ゼロ秒思考』には、階層の乱れたメモが例として出てくる。
悪い例:
- 北海道
- 札幌市
- 新潟県
- 長野県
- 東京都
- 神奈川県
- 横浜市
- 相模原市
- 沖縄県
これでは都道府県と市町村が混ざっており、構造が崩れている。
正しい例:
- 北海道
┗ 札幌市 - 新潟県
- 長野県
- 東京都
- 神奈川県
┣ 横浜市
┗ 相模原市 - 沖縄県
メモでさえ階層化されていないと許せないらしい。
正直これは、僕も深く共感する。
階層の崩れたリストを見ると、背中がむず痒くなる。
七つの大罪を構造化してみたら“四つ”になった
情報構造化の癖がある人間は、日常のあらゆるものを整理したくなる。
たとえば僕は昔から「七つの大罪」の分類がずっと気持ち悪かった。
- 傲慢
- 強欲
- 嫉妬
- 憤怒
- 色欲
- 暴食
- 怠惰
ここには問題点がいくつかある。
- 強欲は色欲や食欲を完全に包含している
- 暴食は「食欲」と書き換えたほうが整う
- 傲慢と憤怒はほぼセット(人は傲慢だから怒る)
整理するとこうなる:
- 傲慢(憤怒)
- 強欲
┣ 色欲
┗ 食欲 - 嫉妬
- 怠惰
七つの大罪は実質「四つ」だった。
気持ちよく整理されてスッキリ。Q.E.D.
居酒屋メニューはMECEの練習台らしい
田中耕比古『一番伝わる説明の順番』では、
構造化のトレーニングとして 居酒屋のメニューを分類し直せ と言ってくる。
例:
- 「焼き物」「揚げ物」の後に「鶏料理」→全部焼き物か揚げ物に分類できるから不要
- 「ご飯もの」に漬物が入っている→「とりあえず」へ移したほうが自然
つまり、居酒屋メニューを MECE(モレなく・ダブりなく) に分けろというのだ。
……正直に言うと、僕もよくやっている。
- 「この店はカテゴリの切り方がMECEじゃない」
- 「論理的に分類するならこうだろ」
などと指摘した結果、友だちは激減した。
だが本によると、これは“構造化の最適な練習”らしいので、僕は正しかった。
(友だちの数はどうでもいいという前提の話だが。)
結論:構造化は気持ちいい。しかし友だちは減る。
コンサル出身者のビジネス書を100冊読んだ結果、分かったことはこれだ。
- 彼らはとにかく構造化が大好き
- ロジックツリー、MECE、ガバニング、階層化が正義
- メニューを分類し直すのは“最適な練習”
- ただし、やりすぎると嫌われる
構造化は確かに便利だ。
情報が整理され、複雑な問題を分解し、判断がしやすくなる。
しかし、居酒屋で「この分類はMECEじゃない」と言い始めると、
シンプルにめんどくさい人になる。
論理とコミュニケーションのバランスが重要だということだろう。
