食料品だけ減税の罠。消費税が招く「経済自滅」のシナリオ
「一部減税」という甘い罠
昨今、生活の苦しさから「食料品だけでも消費税を下げてほしい」という声が高まっている。一見、庶民の味方のように聞こえるこの意見だが、実はここに大きな落とし穴があることをご存知だろうか。安易な一部減税は、かえって経済を混乱させ、中小企業を倒産に追い込む可能性があるのだ。なぜ減税したのに経済が悪化するのか。その謎を解く鍵は、消費税の納税システム、すなわち「仕入税額控除」の仕組みにある。
ラーメン屋を苦しめる残酷な計算式
消費税は、客から預かった税金をそのまま納める単純なものではない。「売上で預かった税」から「経費で支払った税」を差し引き、その残りを納税する仕組みだ。これを仕入税額控除という。しかし、ここには致命的な欠陥がある。それは「人件費」だ。給料には消費税がかからないため、控除の対象にならない。つまり、手作りで手間をかけるラーメン屋のような労働集約型の店ほど、経費として引ける税金が少なくなり、結果として過大な税負担を強いられることになる。これが消費税が「事業者を潰す悪税」と呼ばれる所以である。
現場を無視した机上の空論
では、食料品の税率だけを下げればどうなるか。仕入れにかかる税や光熱費は変わらず、売上の税率だけが下がれば、計算は複雑怪奇となる。さらに、現場は「減税されたのだから値下げしろ」という消費者の圧力に晒されることになる。しかし、原材料費や光熱費が高騰する中で、単純な値下げなどできるはずがない。結果、店は利益を削って値下げに応じるか、客離れ覚悟で価格を維持するかの地獄の二択を迫られる。官僚がデスクワークで弾き出した「プラマイゼロ」の理屈など、変動し続ける商売の現場では何の意味も持たないのだ。
猛毒を取り除く唯一の方法
さらに恐ろしいのは、税率が複数になれば事務負担が激増し、あの悪名高いインボイス制度の導入が正当化されてしまうことだ。複雑な制度に対応できない小規模事業者は廃業し、企業は消費税のかからない正社員を減らし、課税仕入れにできる外注や派遣社員へと切り替えていくだろう。これは雇用の破壊そのものである。消費税というシステム自体が、日本の産業力を削ぐ猛毒なのだ。毒を薄めても体は蝕まれる。我々が目指すべきは、一部減税というごまかしではない。「消費税の完全廃止」、この一点のみである。
