マルクス・アウレリウスは『自省録』の中で、ストア派の哲人エピクテトスの言葉を引用しています。
「われわれは心の衝動という領域に特に注意し、それが妥当なものであるか見極められるよう努めなければならない――その衝動が、節度を保ち、公益に役立ち、真になすべきことであるのかよく確かめよ」
この言葉は、世界を治めた皇帝が、自分を律するために書き留めた戒めでもあります。
権力者が奴隷の知恵に学ぶということ
マルクス・アウレリウスはローマ皇帝として絶大な権力を握っていましたが、彼が信頼したのは元奴隷の哲人エピクテトスの教えでした。
そこには、立場や権力の有無を超えて、普遍的な真理があるからです。
- 衝動を監視すること
- 自分の力の限界を知ること
- 人々のために尽くすこと
これは支配者だけでなく、現代を生きる私たち一人ひとりに必要な姿勢です。
衝動がもたらす危険
衝動には力があります。
時にそれは行動力を与え、勇気や創造性を引き出すこともあるでしょう。
しかし同時に、衝動は破滅へと導く刃にもなり得ます。
- 怒りの衝動 → 人間関係を壊す
- 欲望の衝動 → 判断を狂わせる
- 恐怖の衝動 → チャンスを逃す
だからこそ、衝動をそのまま行動に移すのではなく、**「これは節度を保ち、公益に資することか?」**と自問することが大切です。
歴史に見る「衝動を超えた力」
アメリカ大統領エイブラハム・リンカーンは、奴隷出身の思想家フレデリック・ダグラスと交流しました。
立場の違いを超えた学び合いが、奴隷解放という大きな一歩を生み出したのです。
そこにあったのは、単なる衝動や感情に支配されるのではなく、理性と節度に基づいた選択でした。
歴史の大きな変化は、このようにして生まれてきました。
実践のヒント ― 衝動を見極める3つの問い
- これは一時の感情か、それとも持続する価値があるか?
- 自分だけでなく他者や社会に益をもたらすか?
- 節度を失わずに実行できるか?
この問いを繰り返すことで、衝動を「理性に照らした行動」へと変えることができます。
まとめ ― 衝動に支配されず、衝動を導く
心の衝動は私たちの生活から決して消えることはありません。
しかし、それを放置すれば振り回され、監視すれば力に変えることができます。
マルクス・アウレリウスが自らに言い聞かせたように、私たちもまた、衝動を吟味し、節度と公益にかなった選択をしていきましょう。
それこそが、心の平静と充実した人生を築く鍵なのです。