『規制緩和の代償と主権者の責任。過去の政策が招いた現在の歪み』
規制緩和の源流と加速した変化
我々の現在の生活に、重くのしかかる様々な負担や違和感。 その原因となった規制緩和や構造改革のルーツを辿るとき、多くの人は小泉政権を思い浮かべるかもしれない。 確かに、流れを作ったのは小泉政権であったことは事実である。 しかし、我々の生活に直接的な「悪影響」を及ぼす決定的な変化を、最も熱烈に推進したのは、実は第二次以降の安倍政権であったといえるのではないか。 消費税の増税、基礎的財政収支いわゆるプライマリーバランスの黒字化目標、農協改革、電力やガスの自由化、そして水道の民営化。 さらには、インバウンド推進によるビザ要件の緩和や、外国人労働者の受け入れ拡大に至るまで、実に多岐にわたる政策がこの時期に断行されたのである。 これらは「改革」の名の下に進められたが、その副作用が今、ボディブローのように日本社会に効いてきているといえる。
功績と相殺できない生活への痛み
もちろん、公平を期すために触れておくならば、安倍政権には評価すべき功績もあった。 「特別定額給付金」の支給や、大胆な金融緩和政策などは、財政破綻論という古い呪縛を打ち破るものであり、経済を下支えした側面は否定できない。 しかし、だからといって、それ以外の政策によって現在の我々の生活基盤が揺らいでいる事実が、免罪されるわけではないだろう。 今、我々が直面しているのは、当時「実現」されてしまった政策の負の側面、その尻拭いであるといっても過言ではない。 例えば、外国人留学生制度の問題である。 本来は学びの場であるはずが、実態としては「安価で使い勝手の良い労働力」として活用され、ブローカーまで暗躍する歪な構造が生まれてしまった。 政府は今になって審査の厳格化に乗り出しているが、対応がいささか遅すぎたと言わざるを得ない。
ザル法と化す不動産規制の懸念
そして、より深刻なのが日本の土地、不動産の問題である。 政府は外国資本による不動産取得の実態把握に向け、国籍登録の義務化などを進める方針を示している。 しかし、その実効性には大きな疑問符が付く。 たとえ役員の国籍を登録させたとしても、株主が誰であるか、さらにその背後にどのような資本関係があるかまでは、容易に隠蔽できるからである。 複雑に資本を絡ませた法人がダミーとして機能すれば、現在の日本政府の管理能力でその実態を掴むことは不可能に近いだろう。 単なる義務付けではなく、明確なペナルティや、シンガポールのように重税を課すといった実質的な障壁を設けなければ、日本の国土が切り売りされる流れは止まらないのではないか。
生活空間の浸食とこれからの選択
身近な生活環境に目を向ければ、「民泊」によるトラブルも限界に達している。 鎌倉市などの観光地では、住宅街に民泊施設が急増し、騒音やゴミ出しのマナー違反といった「公害」が住民を苦しめている現実がある。 インバウンド至上主義がもたらした弊害といえるだろう。 筆者はこれまでも一貫して反対の声を上げてきたが、今となっては「過去の経緯は問わないから、とにかく現状を是正してくれ」と願わずにはいられない。 結局のところ、かつて多くの国民が支持し、あるいは黙認した政権が強行した政策のツケを、今みんなで払わされているのだ。 誰かの責任を追及して溜飲を下げるだけでは、事態は好転しない。 我々は主権者として、過去の選択が招いた結果を直視し、これ以上の生活破壊を防ぐために、反省と改善への努力を重ねていくほかないのである。
