政治・経済

『「身を切る改革」の幻想 ―デフレ思考が国を貧しくする―』

taka

「身を切る改革」という誤解

高市総理が就任直後に掲げたのは、「閣僚が議員歳費を超える給与を受け取らないよう法改正に取り組む」という方針だった。
この発言に対し、維新の藤田共同代表は「素晴らしい方針だ」と称賛。いかにも“維新的”な響きである。
だが、本当にそれで国民の暮らしは豊かになるのだろうか。

議員や閣僚が歳費を削ったところで、国民の所得は一円も増えない。むしろ、政治家が支出を減らせば、その分だけ経済の循環は鈍り、誰かの収入が減る。
つまり、「身を切る改革」は、国民をさらに貧しくする政策なのである。

ルサンチマンの政治

長引くデフレの中で、「誰かに損をさせること」が正義だと錯覚する風潮が広がった。
自らの所得が増えない不満を、他者の犠牲によって解消しようとする心理――それがルサンチマンだ。
「身を切る政治家こそ立派だ」と喝采を送るその瞬間、国民は自分の首を絞めているに等しい。

政治家が身を切ったところで、国民の懐は潤わない。
むしろ、政治家が堂々と歳費を受け取り、地元に投資し、雇用や事業に還元してこそ経済は回る。
支出とは、誰かの所得である。

玉木代表と吉田代表の発言にみる変化

そんな中で、ようやく政治の現場から「正論」が聞こえ始めた。
国民民主党の玉木雄一郎代表は、「デフレマインドあふれる給与引き下げ合戦はやめてほしい」と明言し、高市総理の給与削減方針に反対した。
立憲民主党の吉田晴美代表代行も、「いい仕事に見合った給料を堂々と受け取るべきだ」と投稿している。

これは、単なる政治的パフォーマンスではない。
日本社会がようやく「削る政治」から「育てる政治」へと視線を向け始めた証である。

パフォーマンス政治の虚しさ

「減税の財源に議員歳費を削れ!」という声も多いが、それは数字の上でも無意味だ。
衆議院議員465人の歳費を1人あたり1,000万円削っても、総額46億円。
一方、ガソリン暫定税率の廃止による減税効果は1兆5,000億円。桁が違う。
さらに、所得を減らされた政治家ほど汚職のリスクは高まる。
「カネのない権力者ほど危険な存在はいない」という事実を、私たちは忘れてはならない。

経済を回すという発想

政治家の給与を削るよりも、国全体の所得を増やす方がはるかに重要だ。
支出を恐れる「デフレマインド」から脱却し、堂々と使い、回し、成長させる。
それこそが、停滞を破る唯一の道である。

デフレの終わりが見え始めた今こそ、「身を切る」ではなく「国を育てる」政治へ。
パフォーマンスの時代を終わらせるのは、政治家ではなく、私たち一人ひとりの意識の変化である。

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ABOUT ME
TAKA
TAKA
理学療法士/ビール
理学療法士として臨床に携わりながら、リハビリ・運動学・生理学を中心に学びを整理し発信しています。心理学や自己啓発、読書からの気づきも取り入れ、専門職だけでなく一般の方にも役立つ知識を届けることを目指しています。
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