完璧な情報を待つな──H・P・ハウエルに学ぶ「すぐ決める人」の仕事術
「もっと情報を集めてから」──決断を遅らせる人の落とし穴
会議で意見が出尽くしたあと、「もう少し情報を集めてから決めよう」と言う人がいます。
慎重であることは悪いことではありませんが、決断を先延ばしにする習慣は、仕事のスピードもチームの士気も奪っていきます。
USスティール社の役員だった H・P・ハウエル(H.P. Howell) 氏は、
まさにこの“決断の遅さ”が組織の大きな問題になっていることに気づきました。
決まらない会議が、会社を疲弊させていた
当時のUSスティール社では、役員会議で議題が決まることはほとんどありませんでした。
各役員が資料を自宅に持ち帰り、後日再び話し合う──
その繰り返しで、重要な案件がいつまでも進まなかったのです。
ハウエル氏はこの非効率を見て、役員たちに提案しました。
「どんな議題であれ、その場で何らかの決定をくだそう。
たとえ“もっと情報を集める”という決定であってもいい。
何も決めないまま次に進むことだけはやめよう。」
このルールを徹底したところ、
会議の後に持ち帰る報告書は激減し、議題の積み残しもほとんどなくなったといいます。
つまり、決断するという行為そのものが、組織のストレスを解消したのです。
「決める」という行為が、心のエネルギーを回復させる
私たちは「決断すること」そのものに不安を感じる生き物です。
「間違ったらどうしよう」「もっと調べるべきでは?」と考えすぎてしまう。
しかし、心理学では「意思決定疲労(Decision Fatigue)」という概念があり、
決断を先延ばしにするほど、脳のエネルギーが消耗し、集中力が落ちることがわかっています。
ハウエル氏のルールは、まさにこの問題を解決するものでした。
「とにかく何かを決める」ことが、思考を整理し、前に進む力を与えるのです。
情報が7割そろったら、決めていい
経営学者ピーター・ドラッカーもこう述べています。
「完全な情報を待つ者は、永遠に決断できない。」
実際、ビジネスの世界では情報が7割そろった段階で決断するのが理想とされています。
完璧な情報がそろうことはありませんし、行動しなければ新しい情報も得られません。
決断が早い人ほど、結果を見て軌道修正できる。
つまり、スピードこそが最大の情報源なのです。
迅速に決定するための3つの実践ポイント
① “完璧な情報”を求めすぎない
「100%の確信」を求めている間に、チャンスは逃げていきます。
判断に必要なのは“十分な情報”であって、“完全な情報”ではありません。
② 決断を“行動レベル”に落とし込む
「もっと検討しよう」ではなく、「誰が・いつまでに・何をするか」まで具体化しましょう。
行動に変換された決断だけが、実際の成果につながります。
③ 小さく決めて、すぐ修正する
最初から大きな決断を狙わず、まずは“小さな一歩”を決める。
小さく決めれば、失敗しても痛手は少なく、学びは多い。
これが迅速なPDCAの基本です。
「決めないこと」こそが、最大のリスク
USスティール社の例は、個人にもそのまま当てはまります。
決めないでいる時間は、「不安を増幅させる時間」でもあるのです。
デール・カーネギーは言います。
「心配事の九割は、行動を起こさないから生まれる。」
決断とは、迷いを終わらせること。
そして、行動を始めるための第一歩です。
まとめ──決断のスピードが、人生のスピードを決める
H・P・ハウエル氏の「情報がある程度そろったら決断する」というルールは、
今の時代にも通用する最高の時間術・ストレス対策です。
✅ 情報を集めすぎず、
✅ 決断を先延ばしにせず、
✅ とにかく“今できる決定”をくだす。
完璧を待たずに動く人こそ、結果を出し続ける人です。
あなたの次の一歩は、今日この瞬間の「決断」から始まります。
