「正論」は時に暴力になる。相手が心を開くまで口をチャックすべき決定的な理由
「せっかく相談に乗ってあげたのに、相手が不満そうな顔をしている」 「『だからこうすればいいんだよ』と言っても、全然聞き入れてもらえない」
良かれと思って言った正論が、相手を怒らせてしまった経験はありませんか?
実は、どれだけ素晴らしい解決策であっても、**「ある条件」**を満たしていない限り、それは相手にとって無意味な雑音にしかなりません。
スティーブン・R・コヴィー博士は、相手を深く理解する前にアドバイスをすることは、**「診断せずに薬を出す医者」**と同じだと警告しています。
この記事を読むと、以下のことがわかります。
- なぜあなたの「立派なアドバイス」が拒絶されるのか
- 相手があなたに心を開くための唯一の条件
- 信頼される相談相手になるための「鉄のルール」
会話の順番を少し変えるだけで、あなたの言葉は驚くほど相手の心に届くようになります。
眼鏡を外して「これ掛けなよ」と言っていませんか?
コヴィー博士は、よくこんな例え話をします。
あなたが目の調子が悪いと言って眼科に行きました。 すると医者は、自分の眼鏡を外してあなたに渡し、こう言いました。 「この眼鏡は私が長年使ってよく見えたものだ。君にあげるから、これを掛けたまえ」
あなたが掛けてみると、度数が合わなくて余計に見えません。 それでも医者は言います。 「おかしいな、私にはよく見えたのに。もっと前向きに、一生懸命見る努力をしなさい!」
あなたは二度とこの医者のところに行きたいと思いますか? 思いませんよね。 「私の目の状態(現状)を診てもいないのに、勝手な処方をするな」と思うはずです。
アドバイスは「処方箋」である
日常の会話でも、私たちはこれと同じことをやってしまっています。
- 相手:「最近、仕事が辛くて……」
- あなた:「あーわかるよ。そういう時はもっと気楽に考えた方がいいよ(私の眼鏡)」
相手の状況、痛み、背景を深く理解(診断)もしないまま、自分の経験則(自分の眼鏡)を押し付けているのです。これでは、どんなに立派なアドバイスも「的外れ」になってしまいます。
心の鍵を開けられるのは、本人だけ
冒頭の言葉にあるように、**「私があなたに心を開かない限り、アドバイスは無理」**なのです。
人間の心は、外側から無理やりこじ開けることはできません。内側にドアノブがついていて、本人が「この人なら話してもいいかな」と思った時だけ、内側から開けられる仕組みになっています。
なぜ相手は心を閉ざすのか?
相手が心を閉ざしている最大の理由は、「否定されるかもしれない」「分かったような口をきかれるかもしれない」という恐怖です。
逆に言えば、相手が「この人は私のことをジャッジせず、本当に理解しようとしてくれている」と確信したとき、初めて心のドアが開きます。 アドバイスが役に立つのは、その後です。
「理解」という土台の上に「提案」を乗せる
では、正しい相談の乗り方はどのようなものでしょうか。 鉄則は**「理解が先、提案は後」**です。
ステップ1:徹底的に聴く(理解)
まずは自分の意見や解決策を脇に置き、相手の目を見て、相手の言葉と感情に集中します。 「それは辛かったね」「そういう状況だったんだね」と、相手が「そう! まさにそういう気持ちなの!」と言うまで、ひたすら聴き続けます。
ステップ2:状況を共有する
相手が十分に話し、スッキリした表情を見せたら、それは「心が開いたサイン」です。 ここで初めて、お互いに状況を正しく共有できたことになります。
ステップ3:アドバイスする(提案)
土台(信頼と理解)ができたら、ようやくあなたの出番です。 「君の状況はよくわかった。もし私がその立場なら、こうするかもしれないけれど、どう思う?」
この順番で語られた言葉は、相手の心にスッと染み渡ります。なぜなら、それは「一般論」ではなく、**「私のためだけの言葉」**だと相手が感じるからです。
まとめ・アクションプラン
「何か良いことを言おう」と焦る必要はありません。 一番の解決策は、あなたの賢い言葉ではなく、相手が「わかってもらえた」と感じる安心感なのです。
今回のポイントをまとめます。
- 診断(理解)のない処方(アドバイス)は、信頼を失う行為である。
- 相手が心を開かない限り、どんな正論も届かない。
- 「理解が先、提案は後」。この順番を守るだけで人間関係は劇的に良くなる。
今日からできる、聴き上手になるためのアクションを提案します。
Next Action: 次に誰かから悩み相談を受けたとき、最初の10分間は絶対に「自分の意見」や「アドバイス」を言わないと決めてください。 その代わり、**「もっと詳しく教えて?」「その時どう感じたの?」**という質問だけで会話を続けてみましょう。 「十分に聴いてもらえた」と相手が満足した時、向こうから「どうしたらいいと思う?」と聞いてくるはずです。アドバイスをするのは、その時で十分です。
より深く「共感による傾聴」や「信頼関係の築き方」を学びたい方は、世界中で読み継がれている**『7つの習慣』**(スティーブン・R・コヴィー著)を読んでみることをおすすめします。コミュニケーションの悩みを解決する一生モノのスキルが身につきます。
