異様な配当金10倍増と格差を広げる税制の闇
歪んだ企業収益の分配
財務省のデータから、日本企業の異様な実態が浮き彫りになっている。 デフレが始まった1997年度と現在を比較すると、大企業の売上高、人件費、そして投資はほぼ横ばいのままである。しかし驚くべきことに、株主への配当金だけは約10倍にまで膨れ上がっているのだ。 もし売上や給料も順調に成長した上での配当増ならば納得できる。だが、私たちの給料や企業の未来への投資が全く増えていないのに、株主還元だけが突出している。これは明らかに異常な事態といえる。
二重の過ちが招いた停滞
なぜこのような歪な状況が生まれたのだろうか。 一部では「配当の増加ではなく、投資不足が問題だ」と指摘される。確かに投資不足は深刻だが、モノが売れないデフレ下で企業が投資を控えるのは経営として当然の判断である。 本当の問題は、デフレという需要不足を放置したまま、行き過ぎた「株主資本主義」を取り入れ、限られた利益を配当に回し続けたことにある。需要不足の放置と株主偏重という「二重の過ち」が、日本経済の停滞を決定づけてしまったのである。
格差を拡大する税制のからくり
さらに深刻なのが、この株主偏重を後押しする不公平な税制である。 特に問題なのが配当金にかかる「分離課税」だ。一般的な給与所得は収入が増えるほど税率が上がるが、上場企業の配当金はどれだけ巨額でも税率は一律約20%に据え置かれている。 この制度が導入されたのは消費税が始まった1989年である。以降、日本は消費税を増税する一方で、法人税を減税し、所得税の累進性を弱め、株主に有利な税制を維持してきた。つまり、国を挙げて格差を広げてきたのだ。
当たり前の社会を取り戻すために
今こそ、この間違った方向性を転換しなければならない。 消費税を減税し、法人税を適正な水準に戻す。所得税の累進課税を強化し、不公平な分離課税は廃止する。同時に、株主だけを優遇する経営のあり方を見直すことが不可欠である。 一部の富裕層だけでなく、働くすべての人に適切に富が還元される社会を取り戻すために、今こそ抜本的な税制改革が求められている。
