自己啓発

「早くして」と言えば言うほど、人は動かなくなる。効率主義が組織と家庭を壊す理由。

taka

「部下への指導、もっと手短に終わらせたいな」 「子供の悩み相談、10分で解決できないかな」

忙しい毎日、私たちはつい人間関係においても「効率」や「タイパ(時間対効果)」を求めてしまいがちです。しかし、効率を求めれば求めるほど、相手との溝が深まり、かえって問題がこじれてしまった経験はありませんか?

実は、「効率」を求めていいのは「モノ」だけです。「人」に対して効率を求めると、必ず失敗します。

この記事では、『7つの習慣』の著者コヴィー博士が自身の失敗談を通して学んだ、「人間関係における効率と効果の違い」について解説します。 理学療法士として患者さんと接する中でも痛感しますが、信頼関係を築くための時間を「無駄」と切り捨ててしまうと、その後の治療効果はガタ落ちします。

結論をお伝えします。人との関わりにおいて、近道(効率)こそが、最大の遠回りなのです。

「モノ」は効率、「ヒト」は効果

コヴィー博士は、明確な基準を提示しています。

「人との関係を効率で考えることはできない。モノは効率で考えられるが、人に対しては効果の観点から考えなければならない」

  • モノ(効率の世界):掃除、洗濯、データ入力。これらは早ければ早いほど良いです。ロボットやAIに任せて効率化すべきです。
  • ヒト(効果の世界):夫婦の会話、部下の育成、子供への愛。これらを「秒で終わらせる」ことに意味はあるでしょうか?

奥さんの話を「要点だけ3行でまとめて」と言ったらどうなるか、想像できますよね。人間関係において重要なのは、早さ(効率)ではなく、信頼や納得感といった**「効果」**なのです。

論理的な説得がうまくいかない理由

自分と意見が違う人を説得する時、私たちはつい「効率的に」論破しようとします。

「私自身のこれまでの経験からしても、自分と違う意見の人に効率的に意見の違いを説明しようとしてうまくいったためしはない」

「君の考えはここが間違っている。だからこうすべきだ。以上!」 これは効率的な説明かもしれませんが、相手の感情は完全に無視されています。

人は「理解された」と感じて初めて、心を開きます。 相手の話を聴く時間、感情を受け止める時間。一見無駄に見えるこのプロセスを省略すると、相手は意固地になり、説得には倍以上の時間がかかることになります。

「10分の質の高い時間」という嘘

忙しい親や上司がよく陥る罠があります。「時間は取れないけど、その分、濃い時間を過ごそう」という考えです。

「わが子や会社の社員が何か問題を抱えたとき、一〇分間の『質の高い時間』を使って解決しようとしたこともあったが、(中略)新たな問題を生むだけで、根本的な問題の解決にはならない」

「さあ、今から10分間だけお父さんは真剣に聞くぞ!何でも話せ!」と言われて、心の内を話せる子供がいるでしょうか? それは「お前の悩みは10分で処理できる程度のものだ」と言っているのと同じで、相手への侮辱になりかねません。

効率優先は「心」を無視する行為

人の心は、スケジュール通りには開きません。 一緒にテレビを見ている時、ドライブしている時、そんな**「非効率なダラダラした時間(量の時間)」**の中にこそ、ふと本音がこぼれる瞬間(質の時間)が訪れるのです。

時間をケチろうとする態度は、相手に「自分は大切にされていない」というメッセージを送ることになり、新たなトラブル(反発や非行)を生んでしまいます。


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まとめ・アクションプラン

今回の記事のポイントは以下の3点です。

  1. 「効率」を求めていいのはモノだけ。人には「効果(信頼・納得)」を求めるべき。
  2. 意見の違いを効率的に説明しようとすると、かえって反発を招き、遠回りになる。
  3. 「短時間で深く関わろう」とするのは親や上司のエゴ。信頼関係には「時間の量」が必要。

人間関係において、「無駄な時間」はありません。雑談、沈黙、遠回り。そのすべてが、太い信頼関係を築くための「必要な投資」なのです。

Next Action:あえて「無駄話」をしに行く

今日、家族や部下に対して、用件のない会話をしに行ってみてください。 「結論は?」と急かさず、ただ相手の話に耳を傾ける。時計を見ないで5分過ごす。 その「非効率な時間」こそが、長期的には最も効果的な信頼構築の一手になります。

この「人間関係の原則」や「信頼口座」という概念についてより深く学びたい方は、**『7つの習慣』**をぜひ読んでみてください。 特に人間関係に悩む方は、第4〜6の習慣(公的成功)の章を読むだけで、肩の力が抜け、人付き合いが劇的に楽になるはずです。

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ABOUT ME
TAKA
TAKA
理学療法士/ビール
理学療法士として臨床に携わりながら、リハビリ・運動学・生理学を中心に学びを整理し発信しています。心理学や自己啓発、読書からの気づきも取り入れ、専門職だけでなく一般の方にも役立つ知識を届けることを目指しています。
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