不安の正体は「確かさ」への執着にある：老子が教える“あやうさ”を生きる力

「確かさ」を求める心が、不安を生み出す

老子は言います。
「確かなものにすがろうとするから不安になる。」

私たちは、仕事の安定、人間関係の継続、将来の見通し——あらゆるものに“確かさ”を求めます。
それは一見、安心を得るための自然な行為のように思えます。

しかし、世界はもともと変化の中にあります。
どんなに努力しても、未来を完全にコントロールすることはできません。
それにもかかわらず「確かなもの」を作り出そうとするからこそ、揺らぎや不確かさを前にして不安が生まれるのです。

不安をなくすことはできない。でも、受け入れることはできる

不安を「消そう」とするほど、私たちは不安に縛られていきます。
老子は、無理に安定を求めるのではなく、「あやうさを生きよ」と語ります。

これは、不安や不確かさを拒むのではなく、
むしろその中に身を委ねて生きるということです。

言い換えれば、

「不安をなくすことではなく、不安とともに生きる力を育てる」
という姿勢です。

変化の中で揺れる自分をそのまま認めるとき、不思議なことに心は少し軽くなります。
老子が説く「自然に生きる」というのは、まさにその心の柔軟さのことです。

「確かなもの」は幻想にすぎない

老子の時代も、現代も、私たちは“確かなもの”を求め続けています。
でも、本当に「確かなもの」など存在するでしょうか。

どんなに強固に見える建物も、時間が経てば朽ちます。
どんなに親しい関係も、状況や心の変化で形を変えます。
そして、自分自身の考え方や価値観さえ、少しずつ変わっていく。

それが「生きる」ということ。
世界は常に動いており、私たちもその流れの中にいるのです。

老子が教えているのは、「確かさ」を手に入れることではなく、
「確かさを手放しても生きていける心の力」を持つことなのです。

あやうさに委ねることで、生命力が目覚める

老子の言葉の中に、「あやうさを生きよ」という表現があります。
これは、ただ受け身で生きろという意味ではありません。

むしろ、「不確かだからこそ、生きる力が湧いてくる」という逆説的なメッセージです。

私たちが本当に創造的に、自由に生きられるのは、
未来が決まっていないからこそ。
変化があるからこそ、そこに選択と可能性が生まれます。

つまり、あやうさとは「不安」ではなく「可能性の源」なのです。

不安とともに生きる３つのヒント

1. 「わからない」を恐れない
   わからない状態は、学びと成長の入り口。完璧を求めず、まずは観察する姿勢を。
2. 「変化は悪ではない」と捉える
   変わることは、自然なこと。むしろ停滞のほうが、生命の流れに逆らう行為です。
3. 「今」に意識を戻す
   未来をコントロールしようとせず、いま目の前にある呼吸・感覚・出来事に意識を向けることで、不安はやわらぎます。

まとめ：不安を手放すのではなく、“不安を生きる”

老子の言葉は、現代の私たちにこう語りかけているようです。

「確かさにしがみつくほど、人は不安になる。
しかし、不確かさを受け入れたとき、真の安心が訪れる。」

私たちは変化の中で生きています。
そのあやうさこそが、命の証であり、可能性の象徴です。

だからこそ、確かなものを探すのではなく、
変わりゆく自分と世界を、そのまま信頼してみましょう。

不安とともに生きることこそ、老子が示す“しなやかな生”の形なのです。

TAKA

理学療法士/ビール

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理学療法士として臨床に携わりながら、リハビリ・運動学・生理学を中心に学びを整理し発信しています。心理学や自己啓発、読書からの気づきも取り入れ、専門職だけでなく一般の方にも役立つ知識を届けることを目指しています。