言うことを聞いてくれない部下や子供に悩む方へ。言葉より大切な「信頼残高」の話
「君のためを思って言っているんだよ」 「もっとこうすれば効率的だよ」
部下や家族、友人に対して、良かれと思ってアドバイスをしたのに、「でも…」と反論されたり、不機嫌になられたりした経験はありませんか?
「せっかく教えてあげたのに、素直じゃないな」 そう思いたくなる気持ち、痛いほどよくわかります。しかし、実はそのアドバイスが届かない原因は、相手の性格ではなく、「順番」の間違いにあるかもしれません。
この記事では、『7つの習慣』で語られる**「信頼残高(心の銀行口座)」**という概念を使って、なぜあなたの言葉が相手に響かないのか、その謎を解き明かします。
結論をお伝えすると、「理解」と「信頼」という貯金がない状態で、アドバイスという「引き出し」をしてはいけません。
相手があなたの言葉を「宝物」として受け取ってくれるようになるための、正しい手順をお伝えします。
アドバイスは「お金を引き出す」行為である
まず、コミュニケーションにおける決定的な勘違いを正す必要があります。私たちはアドバイスを「プレゼント(与えるもの)」だと思っていますが、心理的には全く逆です。
「心の銀行口座」の残高不足
人間関係には、目に見えない**「信頼残高(Emotional Bank Account)」**が存在します。
- 預け入れ(プラス): 相手の話を聴く、親切にする、約束を守る。
- 引き出し(マイナス): アドバイスをする、頼み事をする、叱る、自分の意見を通す。
驚くかもしれませんが、**「アドバイス」は相手にとって「引き出し(マイナス)」**なのです。 なぜなら、アドバイスとは「今のままの君じゃダメだ、私の言う通りに変われ」という要求だからです。
銀行にお金が入っていないのに、ATMでお金を引き出そうとしたらどうなりますか? 「残高不足です」とエラーが出ますよね。
人間関係も同じです。 日頃から相手の話を聴かず(預け入れせず)、いきなり「こうすべきだ(引き出し)」と言っても、相手の心は**「残高不足(信頼不足)」**のエラーを起こし、あなたの言葉を拒絶するのです。
テクニックよりも「心」が先
では、どうすれば残高を増やせるのでしょうか? ここで多くの人がやってしまう失敗が、「会話テクニック」に頼ることです。
「私のこと」を見てくれない人への不信感
私の独自性をあなたが深く理解し、心を動かされない限り、私があなたのアドバイスに心を動かされ、素直に受け止めて従うことはないだろう。
この一節がすべてを物語っています。 「一般論」や「マニュアル通りの相槌」で接してくる相手に対し、私たちは心を開きません。
「私の悩みは、他の誰とも違う特別なものだ」 「この苦しみは私にしかわからない」
誰もがそう思っています。その**「私だけの独自性(ユニークさ)」**を深く理解しようとせず、「ああ、よくある話だね。それならこうすればいいよ」と片付けられると、私たちは「軽視された」と感じます。
医者の例えで考える
お腹が痛くて病院に行ったのに、医者が顔も見ずに、 「はいはい、最近流行ってる風邪だね。薬出しとくよ」 と言ったらどう思いますか?
「ヤブ医者だ! 本当に診察したの?」と不安になり、その薬を飲む気になれませんよね。 まずは**「診断(理解)」があって、初めて「処方箋(アドバイス)」**が信頼されるのです。
信頼残高を貯める唯一の方法
相手の心を開くには、近道はありません。地道に「預け入れ」をするしかないのです。
「口」を閉じて「耳」と「目」を開く
まずは、自分の言いたいこと(解決策)をぐっと飲み込み、相手を理解することだけに集中してください。
- 共感する: 「それは辛かったね」「そういう気持ちだったんだね」と、相手の感情に寄り添う。
- 人格を磨く: テクニックで操作しようとせず、「あなたの力になりたい」という誠実な態度で接する。
あなたが本気で相手の立場に立ち、心を動かされた時、初めて相手も「この人は私のことをわかってくれた」と感じます。
その瞬間、信頼残高という口座にチャリンと大きな「信頼」が振り込まれます。 その残高がたっぷりと貯まった後でなら、あなたの「こうしたほうがいいよ」というアドバイスは、相手の心にスッと届くようになるのです。
まとめ・アクションプラン
「何を言うか」よりも「誰が言うか」が大切だとよく言われますが、それは「どれだけ信頼残高があるか」という意味です。
- アドバイスは引き出し: 信頼のない状態での助言は、ただの「押し付け」になる。
- 理解が最大の預け入れ: 「私の独自性をわかってくれた」という感覚こそが、信頼を生む。
- テクニックより人格: 相手を操作しようとする下心は必ずバレる。誠実な関心だけが心を動かす。
Next Action: もし、アドバイスを聞いてくれない相手がいるなら、**これから3日間、「アドバイス禁止」**のルールを自分に課してみてください。
相手が悩みを話し出したら、解決策を言うのを我慢し、 「そうか、そんなことがあったんだね」「君はそう感じたんだね」 と、ひたすら理解することだけに徹してみてください。
3日後、相手の態度が驚くほど柔らかくなっていることに気づくはずです。
