政治・経済

エネルギー安保の盲点:原油の油質と設備の真実

taka

中東の地政学リスクと過去の備え

ホルムズ海峡や紅海など、中東の主要な海上輸送ルートは常に地政学的なリスクにさらされている。現在、日本がなんとか原油を確保できている背景には、サウジアラビアが40年前に建設した紅海側のパイプラインの存在がある。安全保障とは、いつ、どこで、何が起こるか分からない非常事態に備えることだ。遠い過去のインフラ投資が、今の日本の生命線をわずかに繋ぎ止めているという事実は、私たちに重要な教訓を与えてくれるといえる。

「アメリカから買えばいい」という誤解

中東情勢が不安定になるたびに、「中東の原油が入らないなら、アメリカから買えばいい」という極めて単純な意見を耳にする。しかし、現実はそう簡単ではない。一口に原油と言っても、産出地によって「油質」が全く異なるのだ。そして、日本の製油所の多くは、中東産の中質原油に合わせて設計されてしまっている。原油はただの黒い液体ではない。精製して初めて価値を持つものであり、油質が合わなければその効率は著しく落ちてしまうのである。

設備がなければ原油は使えない

実際のところ、アメリカ産の原油に十分に対応できる日本の製油所は、全体の3割程度に過ぎないと言われている。つまり、いくらアメリカから大量の原油を調達したところで、多くの製油所はそれを受け入れて精製することができず、困り果ててしまうのだ。さらに、国内の石油需要が縮小傾向にある中、製油所は統廃合の道を歩んでいる。調達先を多様化するだけでは問題は解決しない。受け入れ側の設備そのものが対応できなければ、危機を乗り越えることはできないのである。

真のエネルギー安全保障とは

では、非常事態に備えてアメリカ産原油に対応できる設備を増やせばいいのか。しかし、平時に中東から原油が安定して入ってくる状況では、その代替設備は稼働せず無駄になってしまう。これを民間企業の自己責任とコストで整備しろというのは、あまりにも酷な話だろう。だからこそ、国家の出番なのだ。利益を度外視してでも、非常時に備えた設備投資を国が主導する。資源の調達から精製、消費に至るまで、正しい知識と全体像に基づいた戦略があってこそ、真のエネルギー安全保障は確立されるのだ。

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ABOUT ME
TAKA
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理学療法士/ビール
理学療法士として臨床に携わりながら、リハビリ・運動学・生理学を中心に学びを整理し発信しています。心理学や自己啓発、読書からの気づきも取り入れ、専門職だけでなく一般の方にも役立つ知識を届けることを目指しています。
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