「レジ改修に1年かかる」という、あまりに幼稚な嘘
総理大臣が口にした「驚くべき言い訳」
ある党首討論での一幕である。消費税の減税や廃止を求める声に対し、時の総理大臣は真顔でこう反論した。 「消費税をゼロにするには、スーパーのレジのシステム改修などで1年はかかります。私はあちこちで聞いています」 この発言を耳にした瞬間、小売や流通の現場を知る多くの人々は、怒りを通り越して、呆れて開いた口が塞がらなかったのではないだろうか。一国のトップが、ここまで商売の現場を知らないとは、もはや喜劇を通り越して悲劇である。
現場を知らない「裸の王様」たち
「レジの設定変更に1年かかる」? 一体いつの時代の話をしているのだろうか。 現代のPOSレジシステムであれば、税率の設定変更など数時間、いや数回のクリックで完了する作業だ。個人商店のレジ打ちでさえ、設定ボタン一つで済む話である。 また、「値札の張り替えが大変だ」という言い訳もよく聞くが、これも現場への冒涜に近い。スーパーの店員たちは、その日の天候や客足、商品の鮮度を見極めながら、一日に何度も値札を張り替え、割引シールを貼って商売をしているのだ。その日常業務程度の作業が、国家の経済政策を1年も遅らせる理由になると本気で信じているのだろうか。
財務省の「できない理由」を鵜呑みにする罪
ここに見えるのは、政治家たちの圧倒的な「現場感覚の欠如」だ。 彼らは自らの手でレジを打ったこともなければ、売れ残りを減らすために必死で値札を張り替えた経験もないのだろう。だからこそ、財務省の官僚がもっともらしく書いた「減税できないための言い訳」を、疑いもせずにそのまま読み上げてしまう。 そもそも、増税やインボイス制度の導入の際には、現場にどれだけの混乱と負担を強いても、「やれ」と命じてきたではないか。それが国民を救うための減税になった途端、「店側の準備が大変だから」と、取ってつけたような優しさを見せる。このダブルスタンダードこそが、彼らの欺瞞を物語っている。
現代のマリー・アントワネットへ
店側にしてみれば、客足を遠のかせ、売上を落とす「増税」のための作業は苦痛以外の何物でもない。しかし、商品が安くなり、客が喜び、売上が伸びる「減税」のためなら、たとえ徹夜してでも喜んで準備をするだろう。それが商売人というものだ。 「パンがなければお菓子を食べればいい」。かつてのフランス王妃の言葉が重なる。国民の困窮も、現場のリアリティも想像できない為政者が、高みから「できない理由」を説く。その姿は、まさに現代のマリー・アントワネットといえる。 だが歴史が教える通り、浮世離れした権力者が民衆の声を無視し続けた時、その結末がどうなるか。彼らは今のうちに学んでおくべきかもしれない。
