セネカは『生の短さについて』の中でこう書きました。
「いいかね、穀物市場の収支を知るよりも、自分の生の収支を知るほうが大切なのだ。」
この言葉は、私たちがどんな分野で「専門家」になるべきかを問いかけています。
Contents
私たちはどんな専門家になっているのか?
現代人は驚くほど多様な分野で専門知識を身につけています。
- 好きなスポーツチームの全シーズンの記録を暗記している
- 有名人の生涯やスキャンダルを細かく把握している
- 金融市場やデリバティブ取引に精通している
- 中世の文化や歴史に深い知識を持っている
これらは決して無駄ではありません。知識を楽しむことは人間の喜びです。
しかし一方で、もっと大切な「自分の生活」については、意外に無関心なことが多いのではないでしょうか。
セネカが義父に送ったメッセージ
セネカがこの戒めを書いた相手は、彼の義父であり、当時ローマの穀物庫を管理する重職にあった人物でした。やがて彼は政治的な理由からその職を解かれますが、セネカはこう励まします。
「それがいったいどうしたのか。これでようやく内面の探求に力を注げるようになったではないか。」
つまり、外部の役職や知識にしがみつくより、自分の生を理解するほうがはるかに重要だと説いたのです。
どんな専門性が「本当に意味がある」のか?
ここで問い直してみましょう。
- 人生の終わりを迎えるとき、
NFLシカゴ・ベアーズの1987年シーズンについて詳しく知っていることと、
生と死について深く理解していること、どちらが価値があるだろうか? - 子供や大切な人に伝えるとき、
30年間政治ニュースを追い続けた知識と、
幸福や人生の意味を悟った知恵、どちらが役に立つだろうか?
答えは明らかです。
今日からできる「自分の生の収支を知る方法」
- 日々の行動を振り返る
何に時間を費やし、何を得たのかを記録する。 - 本当に大事なことを優先する
趣味や雑学もよいが、「生きる意味」や「心の平穏」に結びつく学びを意識する。 - 人生に役立つ知識を深める
哲学、心理学、人間関係の知恵など、実際に生を豊かにする学びを取り入れる。 - 専門性を「生き方」に向ける
お金や仕事のスキル以上に、自分自身の生活を理解しコントロールする力を養う。
まとめ ― 人生最大の専門分野は「自分自身」
セネカが伝えたかったのは、
「人生の収支を知らないまま、他のことばかり詳しくなっても意味がない」
ということです。
外の知識や情報に精通するのは素晴らしいことですが、最終的に最も大切なのは「自分の生を理解する専門家になること」。
その探求こそが、幸福や意味ある人生につながるのです。