からだの各部位

筋膜(Fascia)の分類と特徴──浅筋膜・深筋膜・臓側筋膜・壁側筋膜の機能を理解する

筋膜の基礎知識

筋膜(fascia)は皮膚の下に広がる 結合組織のシートで、臓器や筋肉、骨を取り囲み、安定性や強度を与え、摩擦を減らす役割を持ちます。

もともと「fascia」という言葉は外科医が使っていた用語で、解剖の際に確認できる臓器や筋肉を包む膜状組織を指していました。
近年ではその定義が広がり、**腱・靭帯・滑液包・筋内膜(endomysium)・筋周膜(perimysium)・筋上膜(epimysium)**なども含めて「筋膜システム」として捉えられるようになっています。


筋膜の分類

筋膜は大きく 浅筋膜(superficial fascia)・深筋膜(deep fascia)・臓側筋膜(visceral fascia)・壁側筋膜(parietal fascia) の4つに分類されます。


1. 浅筋膜(Superficial Fascia)

  • 位置:皮膚直下の脂肪層に存在
  • 構造:疎に絡み合うコラーゲンとエラスチン線維。弾力性に富み、部位により厚さが異なる(体幹部で厚く、四肢末梢で薄い)。
  • 特徴:時に筋線維を含み、特有の構造を形成する。
    • 頸部:広頚筋(platysma)
    • 会陰部:外肛門括約筋
    • 陰嚢:ダルトス筋膜(dartos fascia)
  • 亜型:腹部のスカルパ筋膜(Scarpa’s fascia)。

2. 深筋膜(Deep Fascia)

筋肉・骨・血管・神経を取り囲み、浅筋膜より線維性で密度が高い層です。ヒアルロン酸が豊富で、血管やリンパ管も発達し、自由神経終末(ルフィニ小体・パチニ小体)を含むことがあります。

深筋膜の亜型

  • 腱膜性筋膜(Aponeurotic fascia)
    • 真珠色の厚い線維組織のシート
    • 広範囲にわたって筋付着を可能にし、腱へと移行する場合もある
    • 例:四肢の筋膜、胸腰筋膜、腹直筋鞘
    • 2~3層の平行コラーゲン線維束からなる
  • 筋上膜性筋膜(Epimysial fascia / Epimysium)
    • 骨格筋を直接包む結合組織鞘
    • 一部は骨膜に連続
    • 胸部・肩甲帯・殿部などの大筋群を被う
    • 薄い層で、筋内に侵入する中隔(septa)を介して筋線維と密接に結合

3. 臓側筋膜(Visceral Fascia)

心臓(心膜)、肺(胸膜)、消化器(腹膜)など、体腔内の臓器を包み支える筋膜。臓器を安定させ、動きに伴う摩擦を軽減します。


4. 壁側筋膜(Parietal Fascia)

体腔壁を裏打ちする筋膜で、漿膜の壁側層のすぐ外側に位置します。代表的には骨盤内の壁側筋膜が知られています。


筋膜の連続性

浅筋膜と深筋膜は繊維性の中隔でつながり、脂肪組織や臓器を貫いてネットワークを形成しています。これにより、筋膜は全身に張り巡らされた結合組織の連続体として機能し、身体をひとつにまとめています。


まとめ

  • 筋膜は「筋肉を包む膜」にとどまらず、臓器・神経・血管を支え、全身を統合する結合組織ネットワークである。
  • 大きく 浅筋膜・深筋膜・臓側筋膜・壁側筋膜 に分類され、それぞれ構造と機能が異なる。
  • 臨床での理解により、筋膜リリースや姿勢・運動療法などへの応用が可能となる。
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taka
理学療法士TAKAが自分の臨床成果を少しでも高めるために、リハビリ・運動学・生理学・物理療法について学んだ内容を発信。合わせて趣味の読書や自己啓発等の内容の学びも自己満で発信するためのブログです。