看板に偽りあり。積極財政に隠された「緊縮」の本質
積極財政の看板に隠された本質
「責任ある積極財政」。そう声高に掲げられた財政法改正案の議論を紐解くと、そこには全く異なる現実が透けて見えてくる。 国会で語られたその内容は、一部の投資を除けば、実質的な「緊縮財政」への回帰といえるだろう。 国債を発行しやすくする一方で、政府の姿勢からは、真に国民の生活を豊かにするためのビジョンが見えてこないのだ。
矛盾を抱えた政策と黒字化の罠
その最たる例が、特例公債法、すなわち赤字国債の発行に「行財政改革」を紐づけたことである。 これは、国債を発行して経済のアクセルを踏むと同時に、既存の行政サービスを削減するという強力なブレーキをかける行為に他ならない。 さらに、政府はプライマリーバランス、つまり基礎的財政収支の黒字化を誇らしげにアピールしている。しかし、国家の財政を一般家庭の家計簿と同じように語ることは危険である。黒字化とは、政府が国民に投資する金額よりも、国民から吸い上げる税金の方が多い状態を意味しているからだ。
弱者に冷たい税制と事実上の増税
税制面での冷遇も際立っている。 所得税の「178万円の壁」の引き上げは、わずか2年という時限措置であるうえに、フリーランスや個人事業主にはほぼ恩恵がない。 また、大企業ばかりが潤い、赤字の中小企業には無意味だった「賃上げ促進税制」も、効果が薄かったとして廃止されるという。最初から明白だった欠陥を今になって認めた形である。 さらに見逃せないのが、間もなく徴税期間が終わるはずだった「復興特別所得税」の延長である。その財源を防衛費へと転用し、徴税期間を延ばすという手法は、事実上の増税といわざるを得ない。
本当の「投資」とは何か
確かに、一部の分野へ大胆に投資し、国債を発行しやすくする点は「積極財政」の側面を持っているだろう。 しかし、その投資先は経済安全保障や防衛といった分野に偏っている。本来、国の未来を創るために最も投資すべきは、教育であり、医療や社会保障であるはずだ。 看板ばかりの言葉に惑わされず、その中身が誰のための政策なのか、私たちは冷静に見極めなければならない。
