自己啓発

自分のものだけに集中する:エピクテトスとストックデールに学ぶ「コントロールの哲学」

「覚えておくがよい。本来隷属的であるものを自由だと思い、自分のものでないものを自分のものだと思えば、君は縛られ惨めな思いをし、神々やほかの人々を責めることになる。しかし君が、自分のものだけを自分のものと思い、他人に属するものはけっして自分のものでないと思うならば、君は誰にも縛られず邪魔されず、誰かを責めたい気も起こさず、意に反することは何もせず、敵ももたず、誰にも嫌な目に遭わされない――何をされても嫌な目に遭ったとは思わないのだから」

これはストア派哲学者エピクテトスの『提要』からの言葉です。ここで説かれているのは、「自分がコントロールできるものに集中し、それ以外は自分のものではないと認識せよ」というシンプルながら強力な考え方です。


ストックデール大尉が実践したストア哲学

ベトナム戦争中、米空軍のジェームズ・ストックデール大尉は撃墜され捕虜となり、7年半にわたって過酷な収容所生活を強いられました。残忍な拷問を受けながらも屈せず、抵抗を続け、ベトコン側の宣伝工作に利用されそうになると、自ら体を傷つけてそれを阻止したほどです。

彼は機体が撃墜された瞬間、自分に言い聞かせました。「これからエピクテトスの世界に入っていくのだ」と。これは単に哲学を思い出したという意味ではなく、自分を待ち受ける過酷な運命を受け止める覚悟を決めたということです。


「楽観主義」が危険なときもある

ストックデールは、収容所で特に苦しんだのは「楽観的な人々だった」と語っています。「クリスマスまでには出られる」「イースターには自由になれる」と希望を先送りし続けた人々は、やがて失意のうちに命を落としていったというのです。

ストックデール自身は現実から目を背けず、過酷な環境を正しく認識し、そのうえで「自分にできること」に集中しました。これこそがエピクテトスの哲学そのものでした。


「コントロールできるもの」に集中するということ

私たちの人生にも、コントロールできるものとできないものがあります。他人の評価や天候、経済情勢、上司の機嫌などは私たちにコントロールできません。しかし、自分の考え方、態度、日々の行動、努力の仕方はコントロールできます。

エピクテトスの言う「自分のものだけに集中する」とは、外部の出来事に振り回されず、自分ができることにフォーカスする生き方です。これはストレスを減らし、精神的な自由を得るための強力な方法です。


現代に活かす方法

  1. 自分の影響範囲を書き出す
    困難に直面したとき、自分がコントロールできること・できないことを紙に書き出してみるだけでも心が落ち着きます。
  2. 結果よりプロセスに注目する
    結果は他人や環境に左右されますが、プロセス(努力・姿勢)は自分次第です。ここにエネルギーを注ぐことが重要です。
  3. 「期待」より「覚悟」を持つ
    「○○までにはこうなるだろう」と期待するよりも、「どんな状況が来ても自分は対応できる」と覚悟するほうが心は強くなります。
  4. 他人を責めない習慣をつける
    物事がうまくいかないとき、他人や環境を責めるのではなく「自分ができること」に目を向ける。

まとめ

  • エピクテトスは「自分のものだけに集中せよ」と説いた。
  • ストックデール大尉は過酷な捕虜生活でこの哲学を実践し、生還を果たした。
  • 現代でも、自分がコントロールできることに集中することで精神的な自由と強さを得られる。

外部の出来事は変えられなくても、自分の心と行動は変えられます。そこにこそ、あなたの真の自由があるのです。

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taka
理学療法士TAKAが自分の臨床成果を少しでも高めるために、リハビリ・運動学・生理学・物理療法について学んだ内容を発信。合わせて趣味の読書や自己啓発等の内容の学びも自己満で発信するためのブログです。