『裸の人間』を忘れるな──フランクル心理学が示す“社会の前に人間を置く”というビジネス原則

ビジネスの現場では、
“組織のルール” “会社の常識” “法律” といった、
目に見えない枠組みに私たちは無意識に縛られています。

• 上司が言うから従う
• 規則があるから疑わない
• 評価のために感情を押しつぶす
• 社会的に正しいから思考停止する

気づけば私たちは、
“自分”より“組織”を優先してしまうことがあります。

そんなとき、おじさんが語ったフランクル心理学の
『裸の人間』という概念 は、本質を見つめ直す強い手がかりになります。

■ 夜の公園で浮かび上がった「本当の姿」

物語の主人公が夜の公園へ行った場面。
昼とは違う怪しげな空気の中、おじさんはこう語ります。

「この公園には訳ありの人も集まる。
でも、みんな必死に生きてる“裸の”人間なんだ」

この一言は、現代のビジネス環境にそのまま当てはまります。

会社では役職があり、評価があり、立場があります。
しかし仕事を離れれば、誰もが

• 不安を抱え
• 迷いを抱え
• 弱さを抱え
• 苦しみを抱え

必死に生きる“裸の人間”です。

おじさんが言う“怪しい雰囲気”とは、
人間が“社会の鎧”を脱いだときに見える、
むき出しの生身の姿そのものなのです。

■ 法律や制度は「絶対」ではない

おじさんは続けます。

「法律なんて人間が作ったものだ。
それに従うだけでは責任転嫁になる」

仕事の現場でもよくあることです。

• 「会社のルールだから」
• 「上司が言ったから」
• 「法律上は正しいから」

しかしフランクルは警告します。

「最後の最後まで問題であり続けたのは、“裸の”人間だった」

つまり、
制度やルールではなく、“その行為を選んだ人間そのもの”が問われる
ということです。

ビジネスに当てはめると──

• 顧客を雑に扱ったのは「繁忙だから」ではなく“自分の態度”
• 部下を追い詰めたのは「会社の方針」ではなく“自分の選択”
• 不正に手を染めるのは「評価のため」ではなく“自分の判断”

どんな状況でも
最終的に行動を選ぶのは自分自身
なのです。

“法律や組織の正しさ”を盾にしてしまうと、
この主体性が無くなってしまう。

■ 社会という「舞台」を絶対化してはいけない

おじさんは続けて、こう例える。

「社会は“裸の王様”だ。
みんなが意味あるものだと思い込みすぎてる」

たしかに、
“社会” “会社” “常識” は実体があるように見えます。

しかし本質的には、

• 人間が便宜的につくったルール
• 従いやすい枠
• 安心するためのフィクション

にすぎません。

なのに私たちは、
いつの間にかその「舞台装置」を絶対視し、
自分の心よりも優先してしまう。

フランクルは強制収容所という極限環境で、
この事実を骨の髄まで体験しました。

だからこそ彼はこう言うのです。

人間は社会のために生きるのではなく、
社会が人間のために存在するのだ、と。

■ ビジネスパーソンが忘れてはいけない“価値の順序”

おじさんの話をまとめると、大切な順序はこうです。

1. 人間の命と尊厳（裸の人間）
2. その人間が生きやすくするための社会
3. 社会を運営するための法律・ルール

しかし現実は逆になりがちです。

• ルール → 最優先
• 社会の評価 → 次に大事
• 人間の命 → 後回し

これが働く人を苦しませる原因になっている。

ビジネス現場で最も必要なのは、
“人間が最優先”という原則を取り戻すことです。

■ 『裸の人間』を前提にすると、働き方が根本から変わる

「裸の人間」を前提にすると、組織の解釈が変わっていきます。

◎ 部下の失敗は“能力”ではなく“人間性の問い”

→ 怒鳴るより、なぜそうなったかを一緒に探す方が建設的。

◎ 上司の理不尽も“役割の違い”にすぎない

→ あの人も生身の人間。弱さや迷いを抱えている。

◎ 顧客も“利益のための存在”ではない

→ その人の命や生活が背後にある。

◎ 自分自身も“評価のための駒”ではない

→ 心が疲れたら休むべきだし、涙は弱さではない。

組織や社会という“服”を一度脱ぎ捨てることで、
本来の人間らしい判断が戻ってくるのです。

■ 最後に──フランクルが伝えたかったのは「人間への敬意」

おじさんは最後にこう言います。

「フランクルの言葉には、人間の命への敬意が込められている」

これはビジネスにもそのまま当てはめられます。

• 利益より人
• 役割より人
• 法律より人
• 評価より人
• システムより人

どんな優れた組織哲学より、
最も優先されるべきは“裸の人間”です。

フランクルが残した思想の背景には、
極限状態でもなお「人間の尊厳」を信じた強さがある。

そしてそれは、
現代のビジネスパーソンにこそ必要な視点です。

TAKA

理学療法士/ビール

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理学療法士として臨床に携わりながら、リハビリ・運動学・生理学を中心に学びを整理し発信しています。心理学や自己啓発、読書からの気づきも取り入れ、専門職だけでなく一般の方にも役立つ知識を届けることを目指しています。