「他人と同じ考えになれない」ことを恐れない──フランクリンに学ぶ“独立した思考”の磨き方
「他人と同じ顔になれないように、他人と同じ考えにもなれない。」
ベンジャミン・フランクリンが父ジョサイアに宛てた手紙の一節です。
この言葉には、彼の“自分で考える”という信念が凝縮されています。
それは同時に、現代社会を生きる私たちにも必要な「思考の独立性」と「知的謙虚さ」を教えてくれます。
■意見は「影響」で判断すべきもの
フランクリンは手紙の中で、こう述べています。
「意見というものは、その影響力や効果によって判断されるべきだ。」
つまり、「誰の意見か」ではなく、「その意見がどんな影響をもたらすか」で考えるべきだというのです。
私たちはしばしば、世間の多数派や影響力のある人の意見に流されがちです。
しかしフランクリンは、自分の考えを持つことそのものに価値があると考えていました。
もしその考えが道徳的に害を与えず、誰かを傷つけるものでもないなら、
それは危険なものではない。
むしろ、多様な意見があることで社会は豊かになるのです。
■「人を喜ばせるための意見」ではなく、「誠実な思考」を
フランクリンは父への手紙で、こう続けています。
「人を喜ばすために意見を変えることができるなら、あなたたちのために喜んでそうしたいと思います。」
彼は家族のために気持ちを汲み取りつつも、最後にこう結論づけます。
「とはいえ、他人と同じ顔になれないように、他人と同じ考えにはなれません。」
この一文には、迎合よりも誠実さを選ぶ知性が表れています。
他人を喜ばせるために自分を偽るのではなく、
自分の頭で考え、誠実に意見を持つこと。
それが、フランクリンにとっての“人間としての誇り”でした。
■「違う考えを持つこと」は対立ではなく、多様性
現代でも、SNSや職場などで意見の違いが衝突を生むことがあります。
しかし、フランクリンは「異なる意見」は危険ではなく、自然なことだと考えました。
「他人と同じ顔になれないように、他人と同じ考えにもなれない。」
人間の顔が一人ひとり異なるように、考え方や価値観も人それぞれ。
多様性は不一致ではなく、健全な社会の証なのです。
違いを恐れるのではなく、
「この人はなぜそう考えるのか?」と耳を傾ける。
その姿勢が、対話と理解を深める第一歩になります。
■「間違っているかもしれない」と思える人が成長する
フランクリンは、自分の意見を強く持ちながらも、こう付け加えます。
「自分が間違っていることには心を開いて対応する。
そのためには、どんなことでも辛抱強く耳を傾け、注意深く検討することが必要だ。」
これは、前章(第136節)で語った「知的謙虚さ」の続きでもあります。
彼は、独立した思考と柔軟な心を両立させようとしていたのです。
「自分の考えを持つ」ことと「他人の意見に耳を傾ける」こと。
一見、矛盾するようですが、この両方を持つ人こそ、真に成長し続ける人です。
■まとめ:他人の顔にならず、他人の声に耳を傾ける
フランクリンのこの手紙は、現代の「情報過多の時代」にこそ響くメッセージです。
- 他人と違っても、自分の考えを持つ勇気を持つ
- 違う意見を恐れず、理解しようとする姿勢を忘れない
- 自分の誤りを認め、学び直す柔軟さを持つ
フランクリンの言葉を借りるなら、こう言えるでしょう。
「顔が違うように、考えも違っていい。
大事なのは、互いを理解しようとする心だ。」
