自己啓発

気づかぬうちに“贅沢の罠”に落ちる:フランクリンが警鐘を鳴らした倹約の哲学

taka

「贅沢は知らぬうちに家庭に入り込む」——
ベンジャミン・フランクリンは『自伝』の中で、そう静かに警告しています。

彼はもともと質素倹約を信条とし、質素な家具とシンプルな食事で暮らしていました。
しかし、成功とともにいつしか生活に“変化”が訪れます。
それは、ほんの小さな贅沢から始まったのです。


■たった一つの“シルバースプーン”がもたらした変化

ある朝、フランクリンが食卓につくと、いつもの土器の皿の代わりに陶磁器の深鉢とシルバーのスプーンが置かれていました。
妻が、彼の成功を祝う気持ちで買ってきたものでした。

「あなたも近所の人たちのように、これくらい使っていい人よ」
そう言われたフランクリンは、妻の気持ちを否定することはできませんでした。

けれども、その瞬間が**倹約から贅沢への“境界線”**でした。
一度贅沢を受け入れると、それが“当たり前”になり、次第に生活全体へと広がっていく。
やがて家の中は、高価な陶磁器やシルバー製品であふれ、支出はいつの間にか数百ポンドに達していたといいます。

フランクリンはこの経験を通して、「贅沢は音もなく忍び寄る」と実感したのです。


■贅沢の怖さは、“気づかないこと”にある

フランクリンが指摘するのは、贅沢そのものを否定することではありません。
彼が本当に警鐘を鳴らしたのは、人間の慣れと欲望の連鎖です。

最初は「ご褒美」だった買い物が、やがて「当然の出費」になる。
気づけば、「ないと不安」になってしまう。

この心理の変化こそ、贅沢の本質的な怖さです。
現代でも、同じことが起きています。
たとえば——

  • スマホを最新モデルに買い替える
  • コーヒーを毎朝カフェで買う
  • SNSで見た“映える”アイテムを衝動買いする

どれも一見ささいな贅沢ですが、積み重なれば大きな支出になります。
しかも、自分では「贅沢をしている」という自覚が薄い。
フランクリンが言う“知らぬ間に入り込む”とは、まさにこの心理を指しているのです。


■倹約とは「お金を使わないこと」ではなく、「意識して使うこと」

フランクリンにとって倹約とは、我慢や節制のことではありませんでした。
むしろ「自分の価値観に基づいてお金を使う力」でした。

つまり、倹約とは**“自分の人生を選ぶ”という意志の表れ**なのです。

贅沢は他人の目や比較から生まれます。
隣人が持っているから、自分も欲しくなる。
流行しているから、なんとなく買ってしまう。

その連鎖を断ち切り、
「これは自分に本当に必要なものか?」
と立ち止まること。
それが、フランクリン流の“本当の倹約”です。


■現代に生かす「贅沢とのつき合い方」

私たちはフランクリンの時代とは比べものにならないほど、モノにあふれた社会で生きています。
しかし、その分だけ「無意識の贅沢」も増えています。

少し立ち止まって考えてみましょう。

  • 持っているモノの中で、実際に使っているものはどれくらい?
  • 本当に必要な支出と、惰性で続けている支出の違いは?
  • “心の贅沢”と“見せる贅沢”のどちらを優先している?

フランクリンの教えは、300年経った今も私たちの暮らしに問いを投げかけます。
「贅沢は敵ではない。だが、意識を奪うものには注意せよ。」
彼が残したこの哲学は、消費社会を生きる私たちにとって、ますます価値を増しているのです。


■まとめ:倹約は「自由を守る習慣」

贅沢を完全に排除する必要はありません。
ただし、それに支配されないことが大切です。

フランクリンが実践したように、倹約とは“自由を守るための選択”です。
必要なものに集中し、余計なものを手放すことで、心とお金の両方に余裕が生まれます。

贅沢は気づかぬうちに入り込む。
だからこそ、意識して「質素さ」を選び取ること。
それが、豊かに生きるための最も賢い倹約術なのです。

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ABOUT ME
TAKA
TAKA
理学療法士/ビール
理学療法士として臨床に携わりながら、リハビリ・運動学・生理学を中心に学びを整理し発信しています。心理学や自己啓発、読書からの気づきも取り入れ、専門職だけでなく一般の方にも役立つ知識を届けることを目指しています。
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