数学は“考える力”を鍛える最高の道具──フランクリンが語る、すべての人に必要な学び
「数学ほど、推論能力を高めてくれる学問はほかにない。」
──ベンジャミン・フランクリン(1735年)
300年近く前に書かれたこの言葉は、今もまったく古びていません。
彼は“数学の有用性”を説きながら、同時に「考える力の訓練法」として数学を位置づけていました。
■数字の世界は、生活のあらゆる場所にある
当時のアメリカでは、数学は一部の学者や技術者のものと思われていました。
しかしフランクリンは、印刷業・商業・発明・政治など多彩な経験から、こう主張します。
「算術が実際の役に立つことは、商売をやっている人なら容易に理解できるだろう。」
商品の価格計算、取引の利率、印刷の用紙コスト──
どれも数学的な思考がなければ成り立ちません。
さらに彼は続けます。
「幾何学がなかったら、わたしたちの日常生活は成り立たない。」
建築、測量、航海、機械の設計──
フランクリンが活躍した18世紀の社会はもちろん、
21世紀の私たちの暮らしも、数学の上に立っているのです。
■数学は「考えるためのトレーニング」
フランクリンが最も強調したのは、数学の**実用性だけではなく“思考の訓練効果”**でした。
「数学の方法の正確さによって、精神を最大限につかう習慣を手に入れることができる。」
彼が言いたかったのは、数学が論理的に考える筋肉を鍛えるということ。
数学の問題は、感情や思い込みでは解けません。
必要なのは「前提を整理し、仮定を立て、筋道を追って結論にたどり着く」こと。
この思考の流れは、ビジネスでも、対人関係でも、創造活動でも不可欠です。
つまり、フランクリンにとって数学とは、**人生のあらゆる分野に通じる“思考法の基礎”**だったのです。
■「自分には数学の才能がない」と思う人へ
フランクリンは言います。
「誰もがこの科学を研究し、理解する能力がある。」
つまり、数学は一部の天才のためのものではなく、
すべての人が自分の生活を良くするために使える知恵なのです。
彼は印刷職人から身を起こした“実践家”でした。
だからこそ、「現場で使える学問」として数学を広めようとしたのです。
たとえば、次のような思考の場面すべてが数学的です。
- データをもとに判断する
- 感情ではなく確率でリスクを見る
- 複数の選択肢を比較し、最善策を選ぶ
こうした“理性的な判断力”を育てるのが、まさに数学のトレーニングなのです。
■数学は「啓蒙」の入り口
フランクリンは啓蒙思想家でもありました。
彼にとって、数学は宗教や迷信に代わる「理性の道具」でした。
「数学は、番号をつけ、測定できるすべてのものを理解するための方法である。」
つまり、数学は「世界を冷静に観察するための言語」。
これを身につけることは、世界の見え方を変えることでもあります。
- 数学を学ぶと、感情よりも事実を重んじるようになる
- 物事を測定・比較・検証できるようになる
- 自分の考えを構造的に整理できるようになる
フランクリンが生きた啓蒙時代も、そして現代の情報社会でも、
この“測る力”こそが、理性の象徴なのです。
■まとめ:数字を超えた「考える学問」としての数学
フランクリンの数学観は、今も多くの教育者に通じる洞察です。
- 数学は実生活で役立つだけでなく、思考を鍛える
- 誰にでも学ぶ能力があり、学ぶ価値がある
- 理性と論理を育てる訓練として、最も強力なツールである
彼の言葉を借りるなら、こうまとめられます。
「数学は、数字を学ぶ学問ではない。
“考える習慣”を身につけるための学問である。」
