自己啓発

フランクリンの「13徳手帳」に学ぶ:格言が習慣を支える“心のモチベーション設計”

taka

ベンジャミン・フランクリンが25歳の頃に始めた「13の徳」の実践には、もう一つ大切な仕掛けがありました。
それは、手帳の中に「心を整える言葉=格言」を記しておくことです。

どれほど優れた計画を立てても、続けるモチベーションがなければ習慣は長続きしません。
フランクリンはその心理を深く理解しており、自分を励まし導くための「哲学的モットー」を手帳に書き込んでいました。
そこには、彼の知性と信念が凝縮されています。


■ 手帳に刻まれた3つの言葉

フランクリンが引用したのは、アディソン、キケロ、ソロモンという三人の賢者の言葉です。
それぞれの格言は、「13の徳」を続けるための心の支柱でした。


① アディソン『カトー、ある悲劇』より

「自分は、この信念を抱きつづけよう。もし、われわれの上にパワー(=神)があるなら、徳こそ神に喜ばれるだろう。神の喜ばれることは、自分にとっても幸福になるに違いない。」

アディソン(Joseph Addison)は18世紀イギリスの文人であり、道徳と自由を重んじた思想家でもあります。
この一節は、彼の戯曲『カトー、ある悲劇』からの引用です。

フランクリンはこの言葉を、**「徳を積むことは神の喜びであり、同時に自分の幸福でもある」**という確信として手帳に記しました。
つまり、道徳的努力は義務ではなく、「幸福を生む行為」として捉えていたのです。
このポジティブな姿勢こそが、彼の継続力を支えた最大の要因でした。


② キケロ『哲学について』より(ラテン語引用)

「おお、人生のガイドである哲学よ! 徳の探求者であり、悪徳の追放者である哲学よ! おまえの教えにしたがって過ごせる一日は、過ちにつつまれた永遠よりまさる。」

ローマの哲人キケロの言葉は、**「理性に従って生きる一日こそ価値がある」**というメッセージを伝えています。
フランクリンはこれをラテン語で記し、自分への誓いのように扱っていました。

この格言には、「一日を大切に生きる」ことの意味が凝縮されています。
長い人生よりも、誠実で意義ある一日を積み重ねるほうが、真の幸福につながる――
それはまさに、フランクリンが日々の手帳で実践していた“1日1改善”の哲学と一致しています。


③ ソロモン王の『箴言』より

「その右手に長寿、その左手に富と名誉。その道は楽しく、道筋はみな平和。」

旧約聖書の『箴言』からの引用で、知恵と徳の価値をたたえる一節です。
フランクリンはこの言葉を、人生の最終目標として掲げていました。

知恵と徳を持つ者は、長寿・富・名誉・平和を手にする――つまり、**「精神的充実と物質的豊かさは両立する」**という思想です。
フランクリンは道徳を単なる禁欲ではなく、現実的な幸福へとつなげる実践哲学として理解していました。


■ 「言葉」を使って行動をデザインする

フランクリンの格言活用法は、今日の心理学でも効果的とされています。
人は抽象的な理想よりも、明確な言葉によって行動が方向づけられやすい。
行動科学ではこれを「セルフトーク効果」や「アファメーション」と呼びます。

たとえば、

  • 「今日だけは誠実に行動しよう」
  • 「静かに聞くことで知恵を得よう」
  • 「今の行動が未来をつくる」

このような短い言葉を目にするだけで、脳は自動的に目標を再認識します。
フランクリンが手帳に格言を書いたのも、日々の判断を“哲学的に補正”するためでした。


■ モチベーションを保つ「可視化+言葉」の力

フランクリンの13徳手帳は、単なるチェックリストではありません。
黒点で過ちを記録し、白いページで成長を確認し、そして格言で心を整える――
彼はこの「行動・記録・言葉」の三層構造を使って、長期的なモチベーションを維持しました。

私たちもこれを応用するなら、次のような習慣を取り入れると効果的です。

  1. 毎週のテーマを手帳に書く。
     例:「今週は“誠実”を意識する」「今週は“節制”を磨く」
  2. ページの冒頭に格言を記す。
     例:「小さな誠実が、大きな信頼を生む。」
  3. 毎晩、行動を振り返る。
     できたことを褒め、失敗は次への学びに変える。

格言は、まるでコンパスのようにあなたの行動を正しい方向へ導きます。
その一言があれば、疲れた日も立ち止まらずに前進できるのです。


■ まとめ:モットーは「理想を支える静かな力」

フランクリンが成功を収めた理由は、天才的な頭脳よりも、自分を律する仕組みを持っていたことにあります。
その中心にあったのが、「13の徳」と、それを支える格言でした。

彼にとって格言とは、励ましであり、信念の再確認であり、
日々の迷いを修正してくれる“心の羅針盤”だったのです。

私たちもまた、毎日の手帳に一言のモットーを記してみましょう。
「今日も誠実に」「焦らず、静かに」――その短い言葉が、きっと行動を変え、人生を整えてくれるはずです。

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ABOUT ME
TAKA
TAKA
理学療法士/ビール
理学療法士として臨床に携わりながら、リハビリ・運動学・生理学を中心に学びを整理し発信しています。心理学や自己啓発、読書からの気づきも取り入れ、専門職だけでなく一般の方にも役立つ知識を届けることを目指しています。
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