フランクリン式「思考の整理と文章構成術」:バラバラのメモから論理を再構築する方法
「文章を構成する力は、思考を整理する力である。」
――これは、フランクリンの『自伝』を読むとよくわかります。
彼が10代の頃に独学で行っていたライティング練習は、
単なる作文トレーニングではなく、
**「考える力を鍛える実験」**でもありました。
その中でも、特にユニークなのが今回紹介する方法――
メモをバラバラにして、あとで再構成する練習です。
■ メモを「崩して」から組み立て直す練習
「文章を読みながら作成したメモ書きの束をばらして、ごちゃまぜにしておく。
数週間たってからメモ書きを最適な順番に並べ替え、完全な文章を組み立て直す。」
フランクリンは、『スペクテーター』などの名文を題材にして、
内容の要点をメモとして抜き出していました。
そのメモをわざと順番を崩しておき、
しばらく時間をおいてから「元の構成」を思い出しながら並べ直す――
この作業こそが、彼の「思考整理トレーニング」でした。
■ 思考の流れを「再構築」する力を鍛える
この方法には、単なる暗記を超えた学びの効果があります。
- 文章を論理的に再構築する力
- 要点の優先順位を判断する力
- 一文一文のつながりを意識する感覚
これらが自然と身につくのです。
つまり、フランクリンはこの練習を通して
「どうすれば読者が理解しやすい順番で話を展開できるか」
を実地で学んでいたのです。
■ 「順序の再構成」が思考の筋道をつくる
人は、思考の順序を整理することで初めて、
自分の考えを明確に表現できるようになります。
この点を、フランクリンは直感的に理解していました。
「これは、自分にとっては思考の整理法となった。」
メモを並べ直すことで、
彼は“思考の地図”を描き直す練習をしていたわけです。
そして、この練習を繰り返すうちに、
文章構成のセンスが飛躍的に高まっていったのです。
■ フランクリンが得た「論理の美しさ」
「ときには文章の順序や言い回しがオリジナルより改善できたなと思って、
大いに気を良くしたこともある。」
これは、非常に興味深い一文です。
つまりフランクリンは、原文を再構成していく中で、
「自分の方がうまく整理できた」と感じる瞬間があったのです。
この体験は、単なる模倣を超えて、
**“再構築による創造”**の段階に入ったことを意味しています。
彼は文章を分析し、組み替え、再発見する中で、
論理と表現の関係性を体で理解していったのです。
■ 現代に通じる「フランクリン式構成トレーニング」
この練習法は、現代でも驚くほど応用がききます。
【実践ステップ】
- 名文・記事・論文などを1つ選ぶ
- 各段落の要点をメモする
- メモをシャッフルして順番を崩す
- 数日後、思考の流れを考えながら最適な順序に並べ直す
- 原文と比較して、違いや改善点を確認する
このトレーニングを繰り返すと、
自然に「論理の筋道を立てる力」が鍛えられます。
特に、プレゼン資料や報告書を書くときなど、
情報の順序をどう整理するかで悩む人には最適な練習です。
■ 「文章構成力」はセンスではなく技術である
フランクリンはこの練習を通して、
文章構成力が“天性の才能”ではなく、
訓練で磨ける技術だと気づいていました。
- 何を先に書くか
- どこで転換するか
- どんな順序で説得力を高めるか
これらを意識的に組み替えることで、
どんな文章もより明快で伝わりやすくなる。
彼がこの方法で「自分は良い文章家になれるかもしれない」と
感じたのも当然のことです。
「こんなことをやっているうちに、
もしかすると自分はすぐれた文章家になれるかもしれないと元気づけられた。」
■ 思考整理の本質は「順番の意識」にある
フランクリンのこの練習法から学べる最大の教訓は、
**「考えるとは、順番を決めること」**だということです。
アイデアが多くても、
順序が混乱していれば伝わりません。
しかし、順序を整理するだけで、
思考は明晰になり、言葉に力が宿るのです。
これは、現代の情報社会においても不変の原理です。
■ まとめ:バラバラにして、考えを深める
フランクリンのメモ再構成法は、
単なるライティングの訓練ではなく、
「思考の構造を鍛える脳のトレーニング」でした。
崩して → 並べ直して → 比較して → 改善する。
このサイクルこそ、学びの本質です。
私たちも、文章やアイデアを“いったん崩して”考え直すことで、
より深く、より論理的に思考を整理できます。
思考を整理するとは、
言葉を正しい順序で並べること。
フランクリンが10代で確立したこの方法は、
いまもなお、すべてのライター・学生・ビジネスパーソンにとって
最高の思考トレーニングと言えるでしょう。
