自由貿易の代償:メキシコに見る文明の終点
自由貿易がもたらした「文明の終点」
エルサルバドルの巨大刑務所やスウェーデンのギャング問題など、世界各地で治安の崩壊が起きている。その根底にあるのは、グローバリズムが生み出した貧困と、国境を越えた麻薬や武器の移動である。モノやカネの移動を自由化することが「絶対的な善」であると、自由貿易を無邪気に礼賛する声は多い。しかし、それが真実ならば、犯罪組織や兵器の輸出入、さらには政治家への莫大な賄賂すらも「善」ということになってしまう。そのような単純な理屈が通用するはずがないのである。
ワールドカップを控えたメキシコの現実
その典型例がメキシコといえる。麻薬カルテルの指導者死亡による治安悪化が報じられる中、シェインバウム大統領は、間近に迫るワールドカップ観戦に「危険はない」と懸念の払拭に努めている。しかし、事態は極めて深刻だ。仮にアメリカ軍が介入し、武力でギャングを制圧しようとしても、膨大な数の構成員が他国へと散らばるだけで、根本的な解決には至らない。なぜなら、この問題の真の病巣は、武力ではなく「経済の構造」そのものに深く根ざしているからである。
農業の自由化から始まった負の連鎖
全ての発端は、過去に行われた農産物の自由化であった。1970年代のアボカド自由化により、メキシコの農家は急激に貧困化し、生きるために麻薬の原料となる植物の栽培に手を染め始めた。さらに、NAFTA(北米自由貿易協定)によって安価なトウモロコシが大量に流入すると、廃業した農家が都市部へ雪崩れ込み、巨大な貧困層を形成した。そこで生まれた若者たちは、どれだけ懸命に働いてもまともな生活を送ることができず、這い上がるための唯一の手段としてギャングへの道を選ぶのである。
我々が守るべき最後の防波堤
経済的な豊かさを求めたはずのグローバリズムが、結果として国家を蝕み、治安を崩壊させていく。この逃れられない構造こそ、まさに「文明の終点」といえるだろう。世界全体を救うことは、誰にもできないかもしれない。しかし、他国の惨状を対岸の火事と見過ごすのではなく、そこから教訓を得ることはできる。自由化という耳障りの良い言葉に惑わされず、我々はせめて、この日本という国の社会基盤と文明だけは、確固たる意志を持って守り抜かなければならないのである。
