政治・経済

『ガソリン暫定税率廃止の先にある「価格の真実」』

taka

廃止はゴールではなく、始まりである

ついに、ガソリンの暫定税率が廃止される運びとなった。51年間も「暫定」という名のもとに異常な事態が続いていたことを思えば、これは一つの前進といえるだろう。参議院において反対ゼロ、全会一致で減税法案が通った事実は、ある意味で歴史的だ。これは裏金問題などで国民の怒りが頂点に達し、政治家たちが無視できなくなった結果でもある。

しかし、ここで満足してはならない。1リットルにつき約25円の税金がなくなることは確かに喜ばしいが、本来のガソリン価格はもっと下がる余地があるからだ。私たちはこの「廃止」をゴールではなく、エネルギー政策を見直すスタートラインと捉えるべきである。なぜなら、ガソリン価格の構造には、まだ多くの不可解な点が残されているからだ。

巧妙な「二重課税」のからくり

そもそも、日本のガソリン税制は極めて歪な構造をしている。 価格の約4割が税金で占められている事実をご存知だろうか。ガソリン本体の価格に対し、まず「ガソリン税(本則税率)」が乗り、そこに今回廃止される「暫定税率」が加算され、さらに「石油石炭税」が乗る。そして、これら全ての税金が含まれた総額に対して、最後に「消費税」が課せられるのだ。

これは明らかに「税金に税金をかける」二重課税である。政府は「ガソリン税は製造コストの一部」という苦しい理屈でこれを正当化してきたが、納税者である国民の感覚からすれば、納得できるものではない。この複雑な仕組みこそが、日本のエネルギーコストを高止まりさせている元凶の一つといえる。暫定税率がなくなっても、この二重課税の構造自体が変わらなければ、本質的な解決には至らないのである。

見えざるコストと国際情勢

視点を世界に向けてみると、さらに興味深い事実が見えてくる。 車社会であるアメリカのガソリン価格は、日本よりもはるかに安い。アメリカは広大な国土を持つため、移動手段としての車は生活のライフライン、すなわち「経済の血液」と捉えられているのだ。そのため、政策として徹底的に安く抑えられている。

一方、日本はどうだろうか。円安の影響があるとはいえ、それだけが理由ではない。石油元売り会社への巨額の補助金や、複雑怪奇な流通ネットワーク、さらには帳簿上の操作で輸送コストが上乗せされている可能性など、不透明な要素が多すぎる。本来であれば、もっとシンプルで透明性の高い市場原理が働くべきところを、利権や政治的な思惑が歪めている可能性は否定できない。

経済の血液を守るために

「脱炭素社会の実現」という大義名分のもと、ガソリン価格を高く維持すべきだという意見もある。しかし、それはあまりに現実を無視した暴論ではないだろうか。物流は経済の大動脈であり、地方で暮らす人々にとって車は足そのものである。今の日本経済に必要なのは、疲弊した家計や企業を一息つかせるための、現実的なコストダウンだ。

暫定税率の廃止は、単なる5000円程度の節約という話ではない。これをきっかけに、私たちはエネルギー価格の決定プロセスや、税金の使われ方そのものに厳しい目を向ける必要がある。ガソリンが適正価格になれば、物流コストが下がり、巡り巡って物価の安定や経済の活性化につながるはずだ。 だからこそ、今回の減税だけで「よかった」と思考停止してはならない。これは、より公正な社会を取り戻すための、最初の一歩に過ぎないのだから。

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ABOUT ME
TAKA
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理学療法士/ビール
理学療法士として臨床に携わりながら、リハビリ・運動学・生理学を中心に学びを整理し発信しています。心理学や自己啓発、読書からの気づきも取り入れ、専門職だけでなく一般の方にも役立つ知識を届けることを目指しています。
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